歯の変色は、着色汚れや先天性の原因だけでなく、歯の神経が失われてしまったことが原因である場合もあります。
歯の神経が失われた後、すぐに変色するわけではありませんが、時間をかけて少しずつ歯の色が変化してしまいます。
転倒などで、歯に強い衝撃が加わった場合でも、その日のうちに症状が出ることは少なく、時間が経過してから歯の変色が起きるケースが多いでしょう。
神経の無い歯の変色は、一般的なホワイトニングでは対応できない為、別の治療法が適用されます。
そこで今回は、神経に無い歯を白くする治療法について詳しくご紹介します。
神経の治療をしていないのに歯が変色する原因
神経の治療をしていないのに歯が変色原因は、どのようなことが考えられるのでしょうか。
歯への刺激や加齢、喫煙が原因の場合
歯をぶつけたり、強い歯ぎしりなどで歯に刺激が加わることで、歯の内部の象牙質が厚くなり、歯の色が濃くなることがあります。
また、加齢によって少しずつ歯が黄ばんでくることや、喫煙者の場合は煙草によって歯の色が変色する場合もあります。
この場合、歯の表面に薬を塗布するホワイトニングによって、審美性を改善できる可能性があります。
虫歯の悪化で神経が死んでいる場合
神経の治療をしなくても、虫歯の感染が広がり歯髄(歯の神経)まで達している場合、放置していると歯髄が壊死します。
歯の神経・血管の集合組織である歯髄が壊死することで、痛みを感じることができなくなり、血液循環が止まることで、時間経過と共に歯が灰色や褐色に変色します。
痛みがなくなるということは、虫歯がかなり悪化している可能性が高いため、すぐに治療が必要な状態です。
外傷で神経が死んでいる場合
スポーツ中の強い衝撃や交通事故などで、歯を強くぶつけた場合も神経が壊死することがあります。
事故直後にすぐに変色することは少なく、ある程度時間が経過してから変色します。
その場合も、内部で神経が壊死しているため、根の中の壊死している部分を除去し、洗浄・消毒する根管治療が必要です。
神経のない歯が変色する原因とは
神経を抜くと、歯に血液や栄養が供給されなくなります。
血液の代謝や循環が無くなることで、古い物質が蓄積して色素沈着が起こり、時間の経過とともに歯の色が灰色や黒色、褐色に変色してきます。
また、根管治療をした際に、歯の内部の細管に血液が入り込むことによって変色してしまう場合もあります。
このように、神経の無い歯は内部から変色しているため、歯の表面にホワイトニング剤を反応させるホワイトニングは、効果が見込めません。
神経の無い歯が変色している場合は、ウォーキングブリーチという方法で歯を白くします。
ウォーキングブリーチとは
神経を失っている歯を白くするためには、歯の内側から歯を白くする「ウォーキングブリーチ」という治療が適用されます。
ウォーキングブリーチは、神経を失った歯の内部に高濃度の薬剤を入れて、複数回交換しながら、歯の内側から白くする方法です。
ウォーキングブリーチは、歯の神経の治療をした方や神経が壊死した方で、できるだけ歯を削らずに白くしたい方におすすめです。
ウォーキングブリーチの治療法
STEP1 根管の洗浄
根の中の感染物質を除去して、洗浄・消毒します。
根管治療後の歯の場合は、内部に詰めてある薬剤を除去します。
内部を洗浄・消毒して、ホワイトニング効果のある薬剤を根管の中に入れます。
STEP2 薬剤を入れる
1~2週間程度で薬を交換します。
ウォーキングブリーチをしている歯が希望の白さになったら、薬剤を取り出します。
STEP3 根管の封鎖
根管の中を綺麗に洗い流して、人工物で詰めなおします。
ウォーキングブリーチは、対象の歯が1本でもその部分だけ白くすることが可能です。
ウォーキングブリーチのメリット
ウォーキングブリーチのメリットは、以下の通りです。
歯を削らずに治療ができる
歯の内部の根管から薬剤を入れるため、歯の表面を大きく削る必要がなく、対象の歯だけを白くすることができます。
また、通院した時に薬剤を交換するため、自分で行う手間が無い治療です。
比較的費用を抑えて治療ができる
歯科医院によって価格の差がありますが、ウォーキングブリーチは5000~20000円程度で提供するクリニックが多く、一般的なホワイトニング治療を行うより費用を抑えることが期待できます。
ウォーキングブリーチのデメリット
次に、ウォーキングブリーチのデメリットについてもご紹介します。
歯質が少ない場合は適用できない場合がある
神経の治療をしている歯は、虫歯が進行して感染している部分を大幅に削っている可能性があります。
再度、内部の詰め物を取り出して薬剤を詰める必要がありますが、歯質が大幅に減っていると、歯が強度が低下しているため、ウォーキングブリーチの適用が難しい可能性があります。
歯が色戻りする可能性がある
内部から薬剤を入れるため、効果を得やすいウォーキングブリーチですが、時間の経過とともに色が後戻りする可能性もあります。
ウォーキングブリーチとホワイトニングの違い
ホワイトニングは、歯の表面のエナメル質を白くする治療です。
また、基本的に神経のある歯が対象になります。
歯科医院で行う「オフィスホワイトニング」と自宅で行う「ホームホワイトニング」の2つがあり、併用して効果を高めることも可能です。
一方、ウォーキングブリーチは、内部から神経の無い歯を白くする治療です。
歯科医院に通って行われる治療で、希望の白さになるまで数回薬剤の交換が必要になります。
歯を白くするその他の治療法
ウォーキングブリーチ以外の、歯を白く見せる治療法をご紹介します。
ラミネートべニア
ラミネートべニアは、0.5mm程度歯を削って薄いセラミックを貼り付けることで、歯を白く見せる方法です。
ラミネートべニアは、ホワイトニングやウォーキングブリーチでは白くならない、抗生物質による歯の変色やエナメル質形成不全に適用されます。
短期間で白さを維持できるメリットがありますが、歯を少し削るため、歯の強度が低下する懸念があります。また、10年程度で作りなおしが必要になる場合もあります。
セラミッククラウン
大きな虫歯で神経にまで達した歯の場合、感染している部分をすべて取り除く必要があり、神経を除去する必要があります。
神経を失うと、少しずつ歯が褐色に変色していきます。
その場合、土台を立ててセラミックの被せ物をする治療を選択できます。
内部から歯を白くするウォーキングブリーチも可能ですが、徐々に色の後戻りをする可能性があります。
一方セラミッククラウンは、セラミックを被せるために歯を大幅に削る必要がありますが、希望の白さや形を実現することが可能です。
ただし、セラミックは陶器と同じ硬い素材であるため、強い衝撃で欠けたり、割れたりする可能性があります。
最新医療「歯髄再生治療」とは
歯髄再生治療とは、2020年に日本で初めて実用化された最新医療で、失われた歯髄(歯の神経・血管組織)を、「歯髄幹細胞」の力で再生させる治療法です。
歯髄再生治療単体の治療では、歯の色味を元に戻すことはできませんが、ウォーキングブリーチと合わせて治療を行うことで、白く神経のある歯を回復させることが期待されます。
また、歯髄の再生にともなって、周囲の象牙質の再生も期待できることから、治療で削られ薄くなった歯を丈夫にし、割れにくい歯に戻すことが期待できます。
加えて、歯の痛覚も取り戻せるため、歯にトラブルが起きた際に早く気づくことが可能です。
そのため、二次虫歯のリスクを軽減できます。
【まとめ】
神経の無い歯を白くするためには、ウォーキングブリーチという方法があります。
根管治療をした歯の根管内に、薬剤を数回入れて歯を白くします。
希望の白さになったら、根管内を人工物で充填しますが、時間の経過とともに再度変色してしまう可能性も0ではありません。。
ウォーキングブリーチと組み合わせて「歯髄再生治療」を行うことで、失われた歯の神経・血管を再生させ、白く健康的な歯を取り戻すことが期待できます。
また、歯髄の再生にともなって象牙質の再生も期待できることから、治療で削られ薄くなった歯が割れたり、欠けたりするリスクの低下にも繋がります。。
大切な歯を維持するため、神経を失った歯の白さを維持するため、歯髄再生治療を検討してみてはいかがでしょうか。