虫歯菌の代表的な菌であるミュータンス菌は殺菌できる?

結論から言うと、ミュータンス菌は殺菌できません。しかし、ミュータンス菌の数を減らすことは可能です。

そこで本記事では、ミュータンス菌を減らす方法について解説します。適切なケアでより良い口内環境を築きましょう。

ミュータンス菌とは?

ミュータンス菌とは、虫歯菌の中で代表的な菌です。正式名称を「ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)」といい、大きさは1μmで、口腔連鎖球菌と呼ばれる種類に属します。

ミュータンス菌は、グルカンと呼ばれる物質を作り、歯の表面に付着して歯垢を作るほか、ブドウ糖や砂糖から作り出した酸で歯を溶かします。

菌が酸を作ると、周りの環境は酸性になりますが、酸性の環境でも菌自体が弱体化することはなく酸を放出し続けます。

また、北海道大学大学院歯学研究院の研究によると、ミュータンス菌は血管の炎症を介してがん転移を促進することがわかっています。

  引用:日本歯科新聞「ミュータンス菌が、がんの転移を促進/血管炎症を介して影響」

ミュータンス菌は殺菌できない

口内で無数に存在しているミュータンス菌は、いかなる方法を用いても殺菌できません。

市販で売られている洗口液を使用することで菌を減らすことは可能ですが、無菌状態にすることは不可能です。

口内環境を良好に保つには、バランスをとることが大切です。
ミュータンス菌のような悪玉菌が多く、口内環境が劣悪になっている場合は、全体を除菌することで細菌の総数を減らせます。しかし、善玉菌とのバランスが乱れてしまい、口内環境が悪化するおそれがあります。

ミュータンス菌すべてを殺菌することはできませんが、口内に存在する善玉菌や悪玉菌、日和見菌のバランスが適正であれば問題ありません。適度な状態を維持していきましょう。

歯医者でミュータンス菌を減らす方法

ミュータンス菌は完全に除去できるものではありませんが、歯医者で以下の治療を受けるこを受けることで細菌数を減らすことができます。

  • PMTC
  • 3DSセラピー
  • エアフロー

PMTC

PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・ティース・クリーニング Professional Mechanical Tooth Cleaning)とは、歯の表面に付着した歯垢を機械で除去する方法です。
歯科衛生士が行う歯のクリーニングの1種であり、予防先進国のアメリカでは、大半の人がPMTCを受けています。

実際にアメリカでは日本に比べて、虫歯の罹患率や歯周病による歯の喪失数が少なく済んでいることを考えると、それほどPMTCはプラークコントロールの方法として優れているといえるでしょう。

3DSセラピー

3DS(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム Dental Drug Delivery System)とは、安全かつ確実に抗菌薬を歯の表面に塗る方法です。
歯列に合うリテーナーを作り、中に虫歯菌や歯周病菌などの悪玉菌を除菌する薬剤を入れ、口に装着します。

2000年に国立感染症研究所の花田信弘部長らによって開発された方法で、虫歯や歯周病、歯原性菌血症の予防が可能です。

エアフロー

エアフローとは、歯周ポケット内のバイオフィルム(微生物の集合体)を破壊するために開発された機器です。

歯石除去やPMTCなどでは除去できない歯周ポケットやバイオフィルムを除去できます。

生体にとって無害なアミノ酸の1種であるグリシンや、炭酸水素ナトリウム、エリスリトール等をパウダーとして使用し、バイオフィルムを短時間で吹き飛ばします。

自宅でミュータンス菌を減らす方法

歯医者だけでなく、自宅でも以下の方法でミュータンス菌を減らすことが可能です。

  • フッ素入りの歯磨き粉で歯磨きする
  • キシリトールガムを噛む
  • セルフケアを徹底する

いずれも簡単に実践できる方法ですので、さっそく日々のセルフケアに取り入れてみてください。

フッ素入りの歯磨き粉で歯磨きする

フッ素には抗菌作用があるため、フッ素入りの歯磨き粉を使用することで、ミュータンス菌の活動が抑えられます。

特にフッ素が1450ppm配合された歯磨き粉を使うと良いでしょう。

また、合わせてミラノール顆粒などのフッ素洗口液などを使用するのもおすすめです。

キシリトール100%ガムを噛む

キシリトールは、虫歯予防効果が証明されている天然の甘味料です。
キシリトール100%ガムを1日5〜10gを3回以上に分けて噛むことで、ミュータンス菌の量が減らせます。

ミュータンス菌は、キシリトールを菌体内に取り込むものの、利用できないため、菌体外に捨てます。
その後、再びエネルギーを使用して取り込むことで、エネルギーの無駄遣いを繰り返すのが特徴です。

この作用により、キシリトールはミュータンス菌の増殖や歯垢の形成を部分的に抑制します。

セルフケアを徹底する

日々のセルフケアを徹底することでも細菌の数を減らすことができます。

日々の歯磨きを前提に、ブラッシング後はフロスや歯間ブラシを使用してケアをしましょう。歯ブラシでは届きにくい歯の隙間の食べかすなども除去できるためおすすめです。

ミュータンス菌の予防方法

ミュータンス菌を減らす工夫だけでなく、以下の方法で予防にも気を配ることで健康的な口内環境が作れます。

  • 生活習慣を整える
  • サプリメントを摂取する
  • 定期健診を受ける

生活習慣を整える

ミュータンス菌を予防するには、バランスのとれた食事を心がけることが大切です。

糖分を多く含むものをなるべく控え、フルーツや野菜を積極的に食べましょう。これらは、唾液中のカルシウムを増加させ、酸を減少させる効果が期待できます。

また、口が乾くと歯垢が口内に残り、ミュータンス菌が繁殖する原因になりますので、日頃からこまめに水分補給する習慣をつけましょう。

サプリメントを摂取する

ビタミンCやビタミンDは、健康的な歯を作るためのサポートをしてくれます。
食事だけでなく、サプリメントを活用することで、効率的な摂取が可能です。

定期検診を受ける

ミュータンス菌が増えると、虫歯や歯周病などの原因になります。
日々のセルフケアを徹底していても、知らない間に口内環境が悪化していると、口内疾患にかかっているかもしれません。

歯医者で定期検診を年に2〜3回受けておくと、こういった自分では気づけない歯の状態の変化がわかるため安心です。
万が一虫歯や歯周病にかかっていても、初期段階で対処できれば進行を食い止められます。

まとめ

口内に存在するミュータンス菌は、いかなる方法を用いても殺菌できません。しかし、細菌の数を減らすことは可能です。

歯医者でPMTCや3DSセラピー、エアフローなどの施術を受けることでミュータンス菌は減ります。

また、ミュータンス菌はフッ素入りの歯磨き粉を使用して歯磨きしたり、サプリメントなどを摂取したりすることでも減らすことが可能です。

日頃から丁寧にケアをしていき、健康的な口内環境を作っていきましょう。