1度虫歯になった歯は、治療を行っても再度虫歯になる可能性があります。
特に治療で歯髄(神経)を取り除いた歯は痛みを感じないため、虫歯に気づかず、より悪化しやすい傾向にあります。
大切な歯を維持するためにも、虫歯が再発する原因と予防法を知って、健康な歯を目指しましょう。
虫歯が再発する原因
虫歯が再発する原因についてご紹介します。
・1 不完全な治療
虫歯は細菌感染症であり、放置すると感染が拡大するため、一度虫歯になった歯の感染部分はすべて除去する必要があります。これはよく行われていることなので簡単なことのように思われている方が多いですが、実は難しい処置になります。
しかし、不完全な治療で感染部分を除去できていないと、詰め物や被せ物の中で細菌が増殖して感染が広がる可能性があります。
特に、虫歯が歯髄まで浸食している場合、歯髄を除去しても歯の根の中に虫歯菌が残っている可能性があります。
しかし、歯髄が失われているため、痛みを感じることがなく、発見が遅れてしまいます。
また、詰め物や被せ物のすき間がある場合、その部分から虫歯菌が入り込む可能性も考えられるでしょう。
・2 セルフケアが十分ではない
虫歯を治療しても、セルフケアが十分でないと虫歯が再発するリスクがあります。
1度治療した部分は元々歯磨きがしづらい箇所であることが多く、再発しやすい傾向にあります。
また、1度治療したという安心感からセルフケアを怠ってしまうケースも少なくありません。
たとえ、治療した部分であっても、汚れが残った状態が続くと二次虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
また、治療した歯に細かな段差ができることもあり、治療していない歯と比較すると二次虫歯になりやすい特徴もあります。
そのため、毎日の丁寧なセルフケアが大切です。
・3 詰め物・被せ物が合っていない
詰め物・被せ物は経年変化によって少しずつ劣化していくため、すき間ができる可能性があり、その部分から虫歯菌が侵入するリスクがあります。
特に、銀歯は少しずつ変形したり、すり減りが起きたりします。
また、奥歯は噛む力が強くかかるため、詰め物と接する表面のエナメル質が欠けてしまうこともあります。
そのため、歯と詰め物・被せ物の間にすき間が生じてその部分に汚れが残りやすくなり、二次虫歯のリスクが高まります。
・4 歯を削ったことによる強度の低下
虫歯が広がると感染している部分を除去するために歯を削る必要があります。
歯の表面は硬いエナメル質があり、その内部には、エナメル質よりもやわらかい象牙質があります。
治療により、これらが大きく削られると、歯の強度が低下して、歯が欠けたり、割れたりする可能性が高まります。
欠けた部分や割れた部分から虫歯菌が入り込むと、二次虫歯になる可能性が高くなります。
虫歯が再発するとどうなる?
再治療が必要になると歯を削る範囲が広くなります。
また、根管治療をしている歯は、痛みを感じないため、再発しても気づきにくく進行しやすい特徴があります。
虫歯が進行すると歯を残すことが難しいケースもあり、治療を繰り返して結果的に抜歯に至ってしまう流れをリピート・レストレーション・サイクルと呼びます。
・リピート・レストレーション・サイクル
歯の治療を繰り返すことで、歯を失ってしまうまでのライフサイクルを示しているのが、「リピート・レストレーション・サイクル」です。
1 健康な歯
2 むし歯
3 詰め物・被せ物の治療
4 二次虫歯
5 抜髄
6 被せ物
7 辺縁部の虫歯・根が割れる
8 抜歯
少しずつ虫歯が進行した場合は、このサイクルが少しずつ進んでいきますが、虫歯を長期間放置していると前半のステップを飛ばして神経を処置をする「抜髄」をしなければいけない場合もあります。
・抜髄をするケース
歯髄は、歯に栄養や水分を送る役割や痛みを感じる役割を担っています。
歯髄を失ってしまうと、歯に栄養や水分を補給することができなくなるほか、歯にトラブルが起きた時も痛みを感じなくなるため、知らず知らずのうちに虫歯が進行してしまうリスクが高くなります。
また、歯髄を除去した歯は、大幅に歯の内部を削っていることがあるため、根が割れて抜歯になる可能性も高くなります。
虫歯の再発を防ぐために検討したい治療
虫歯の再発や虫歯による抜歯を防ぐためにできる治療をご案内します。
・歯髄は虫歯の再発を防ぐために重要
歯髄には、歯に異変が起きた時に痛みを伝える重要な役割があります。
そのため、痛みを伝える歯髄がなければ内部で二次虫歯が広がっていても気づくことができず、二次虫歯が悪化しやすくなります。
虫歯の再発を防ぐためには、歯髄による痛みの伝達が大切です。
・神経の再生をする歯髄再生治療
歯の健康を維持するためには、日頃からケアを行い虫歯にならないような口腔環境を作り、歯髄を健全に保つことが大切です。
虫歯に感染すると歯を削る治療が必要になり、歯の寿命を縮めてしまうことにつながります。
しかし近年、虫歯が進行して歯髄を除去する治療が必要になった場合でも、歯髄が再生できる再生医療を選択できるようになりました。
それが「歯髄再生治療」です。
歯髄再生治療とは、乳歯や親知らず等の「かみ合わせに影響のない健康な歯」の中から歯髄幹細胞を取り出し、歯髄を失った歯に幹細胞を移植することで、歯髄を再生する治療法です。
歯髄の機能が回復するため、歯が栄養や水分を受け取ることができるようになるほか、歯の知覚機能も取り戻せます。
そのため、歯のトラブルが起きた時に痛みを感じることができるようになり、異変に早期に気づけるようになります。
また、歯髄の再生に伴って象牙質も再生されることから、治療で削られ薄くなった歯の根に厚みをもたせることも期待できます。
これにより、治療前よりも歯が割れづらくなり、抜歯を防ぐことにもつながります。
歯髄再生治療の流れ
STEP1 抜歯した歯の中から歯髄幹細胞を取り出す
乳歯や親知らずなどのかみ合わせに用いない歯の中から、歯髄幹細胞を取り出して1〜2ヶ月程度培養します。
STEP2 幹細胞の移植
歯髄が失われた歯の根の中を洗浄・消毒して、十分な数に増えた歯髄幹細胞を移植します。
STEP3 歯髄の再生・血管の伸長
歯髄幹細胞の働きにより、歯の内部に神経や血管が誘導され、歯髄の再生が促進されます。歯髄が再生すると、歯髄の働きで周囲の象牙質が再形成されるため、歯の強度が高まることが期待できます。
幹細胞移植後、約1年間は経過観察をしながら様子を見ます。
虫歯の再発を防ぐために日常生活でできること
最後に、虫歯の再発を防ぐために日常生活でできることをご紹介します。
・毎日正しいセルフケアを行う
歯と歯の間、奥歯の溝、歯茎の境目をしっかり磨くセルフケアを怠らないようにしましょう。
特に、虫歯治療を行った歯は、歯と歯の間や歯茎の境目に被せ物との段差ができると汚れが残りやすくなります。
歯1〜2本分ずつ、歯ブラシを細かく動かして、汚れが残らないようにしましょう。
・デンタルフロスの併用
歯と歯の間は、歯ブラシだけでは汚れが取りづらい部分であるため、デンタルフロスを通して、歯と歯の間の汚れを除去しましょう。その際は、手前の面と後ろの面に分けて2回行うとより効果的に汚れを除去することができます。
また、被せ物と歯の間に段差が出来ていたり、虫歯ができていたりすると、引っかかりができることがあるため、フロスが引っかかるようになったら、1度歯医者で相談してみましょう。
・歯間ブラシの併用
歯と歯のすき間が大きい場合には、歯間ブラシを併用しましょう。
ただし、歯間ブラシには、4S〜3Lなど様々な大きさがあります。
歯茎のすき間より大きすぎる歯間ブラシを使用すると歯茎を傷つけてしまう可能性があるため、歯間ブラシに迷ったら、定期検診の際に確認すると良いでしょう。
・食生活の改善
虫歯菌は糖分を栄養にして、歯を溶かす酸を作り出します。
そのため、糖分を摂取する際は、時間を決めて食べるようにしましょう。
そして、糖分を摂取した後は、歯磨きやうがいを怠らないようにしましょう。
・フッ素入りの歯磨き粉を使う
フッ素には、「歯の質を強くする働き」「虫歯菌を抑制する働き」「歯の再石灰化を促進する働き」があります。
そのため、虫歯予防の効果が見込めます。
家庭で毎日使用できるフッ素入り歯磨き粉を利用するほか、歯科医院でのフッ素塗布も効果的なです。
歯科医院で塗布するフッ素は、フッ素濃度が高いため、3ヶ月に1度程度の塗布がおすすめです。
・定期的に検診に通う
虫歯は自覚症状がないケースもあるため、定期的に検診をして口の中をチェックすると、自覚症状が無い段階の虫歯も発見しやすく、早期発見・早期治療につながります。
特に、1度治療して歯髄を除去した歯は痛みを感じないため、定期的に検診を受けて、歯の状態を確認することが大切です。
【まとめ】
虫歯が再発する原因として、取り除けていない感染部分があること、詰め物や被せ物が劣化してその部分に段差ができてしまうこと、セルフケアが不十分なことなどが挙げられます。
大切な歯を維持するためには、二次虫歯を予防することが大変重要になります。
治療を繰り返して歯の寿命が短くなっていくリピート・レストレーション・サイクルの進行を防ぐために、正しいセルフケアや、定期的な検診が大切であり、虫歯の再発を防ぐ有効な手段です。
また、歯髄を除去した歯は弱くなってしまうため、歯髄を回復させる歯髄再生治療という選択肢も視野に入れましょう。
失った歯髄の機能を取り戻し、痛みを感じられるようになることで、歯の異変にも気づくことができるようになります。