田中 宏幸/歯科医師
「もしかして、初期の虫歯かも？」
このように疑問を感じながらも、確証が得られず、困ったご経験はないでしょうか。
本記事では、初期の虫歯の症状や治療方法、費用、予防方法などを紹介します。もしも、初期の虫歯症状に該当した場合は、速やかに歯医者を受診しましょう。
初期の虫歯とは？
初期の虫歯とは、虫歯になる一歩手前の状態です。歯に穴が開く前の状態を指し、痛みがほとんどないため、放置されてしまうこともあります。
初期の虫歯は、一見すると白く見えるのですが、よく見ると白く濁って見えることがあります。
X線写真で歯を見た場合は、歯の内部のミネラルが溶け出し、暗く映るのが確認できます。虫歯の進行状態は初期であるため、歯を丁寧にブラッシングしたり、フッ素を塗ったりすることで進行を止めることができる治療できる場合がほとんどです。
虫歯の初期症状
初期の虫歯は症状が出にくいため、見逃してしまうことがあります。初期の虫歯を見逃さないために、以下の症状を押さえておきましょう。
- 甘いものや冷たいものがしみる
- 奥歯の溝が黒っぽくなる
- 歯の表面が変色する
- 歯と歯茎の隙間が白っぽくなる
- デンタルフロスが切れる
虫歯の初期段階では、上記の症状が起こります。少しでも異変を感じたら、速やかに歯医者を受診してください。
甘いものや冷たいものがしみる
甘いものや冷たいものを食べたり飲んだりすると、歯がしみることがあります。複数回試しても歯がしみる場合は、初期の虫歯になっているおそれがあります。
奥歯の溝が黒っぽくなる
奥歯は溝が多くあり、細菌や食べかすが溜まりやすく、黒っぽくなることがあります。自分で確認が難しい場合は、家族や友人などに確認してもらいましょう。
歯の表面が変色する
歯の表面が白く濁っている場合、エナメル質が溶け出し、初期の虫歯になっているおそれがあります。
歯と歯茎の隙間が白っぽくなる
歯の表面であるエナメル質と象牙質の境界線で虫歯が進行することにより、歯と歯茎の隙間が白っぽくなることがあります。
デンタルフロスが切れる
虫歯になることで、歯と歯が接触している部分が粗造になり、デンタルフロスが切れやすくなることがあります。
初期の虫歯の治療法
初期の虫歯は、比較的治療しやすいとされています。おもな治療法は以下の3つです。
- PMTC
- シーラント
- フッ素治療
いずれも歯医者に通いながら、継続的におこなうべき治療法です。自分がやりやすいもの、興味のあるものから始めましょう。
PMTC
PMTC（プロフェッショナル・メンテナンス・クリーニング）は、歯医者でおこなわれる専門的なクリーニング方法です。
歯科衛生士が専用の器具を使用し、虫歯の原因となる歯垢や歯石を取り除き、歯の表面を清掃します。
PMTCを定期的に実施することで、歯の健康状態が維持しやすくなるため、継続することをおすすめします。
シーラント
シーラントは、歯の表面に薄いプラスチックの層を塗布することで、虫歯の予防効果を高める治療法です。
歯の凸凹部分や奥歯の溝などを含め、プラスチックの層を塗ることで、歯垢や食べかすの付着を防ぎ、歯の表面を保護できます。
特に、歯垢が付着しやすい奥歯の虫歯予防に効果的です。
フッ素治療
フッ素を歯に塗ることで、歯質が強化され、虫歯予防につながります。また、抗菌作用によって虫歯菌が出す酸をブロックするため、初期虫歯を治療することも可能です。
初期の虫歯の治療期間
初期の虫歯で治療が必要になった場合は、レジンの充填1回（1日）で治療できます。歯を削ってレジンを充填するために15〜20分程度、仕上げのために5〜10分程度必要です。
審美性を重視し、よりきれいに治療したい場合は、ダイレクトボンディングがおすすめです。ダイレクトボンディングは、治療箇所がわからなくなるほど審美性が高くなっています。
ダイレクトボンディングで治療する場合は、60分前後の時間がかかるでしょう。
初期の虫歯の治療費用
初期の虫歯の治療費用は、保険診療で3割負担の方の場合、1,000〜2,000円程度です。初診の場合は、初診料を含めて3,000〜4,000程度になるでしょう。
詰め物などが必要な場合、保険診療で3割負担の方であれば、3,000〜6,000円程度です。一方で、自由診療の場合、素材によっては40,000〜50,000円程度になります。
虫歯は進行すればするほど、状況が悪化して治療費が高くなるため、早期発見・早期治療が大切です。
そのまま虫歯を放置するとどうなるかは、下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
虫歯の予防法
虫歯の予防方法は、誰でも簡単に実践できます。おもな予防方法は以下のとおりです。
- セルフケアを徹底する
- 歯磨きの指導を受ける
- 歯のクリーニングを受ける
歯磨き指導を受けた上で歯磨きをすると、より効率的に歯垢が落とせるようになります。
また、歯間ブラシやフロスを活用したり、キシリトールガムを噛んだりすることも効果的です。
上記にあわせて定期的に歯のクリーニングを受けることでより高い予防効果が期待できます。
セルフケアを徹底する
日々の歯磨きを前提として、以下のセルフケアを徹底することで、虫歯のリスクを下げることが可能です。
- 歯間ブラシやフロスを活用する
- キシリトールガムの活用
- フッ素入りの歯磨き粉を使って歯磨きする
歯垢は、歯ブラシだけでは落としにくいため、歯間ブラシやフロスを活用することをおすすめします。
また、キシリトール100％のガムを噛むことで虫歯の発生や進行を遅らせることが可能なため、活用してみてください。
上記に加えて、普段の歯磨きの際にフッ素入りの歯磨き粉を使った歯磨きもおすすめです。
歯磨きの指導を受ける
日々の歯磨きを継続しても、正しく磨けていない場合、磨き残しが発生して虫歯のリスクが高まります。
正しく歯を磨くために、歯科医師や歯科衛生士などから歯磨き指導を受けることをおすすめします。
歯ブラシの持ち方や動かし方など、細かい指導を受けて実践することで、虫歯の原因である歯垢を効率的に落としやすくなるでしょう。
歯のクリーニングを受ける
日々の歯磨きに加え、定期的に歯医者でクリーニングを受けることで、口内環境がより清潔に保てます。
歯ブラシでは、歯石やバイオフィルム（微生物の集合体）を取り除くことは難しいですが、歯医者のクリーニングであれば可能です。
歯医者のクリーニングを定期的に行うことで、虫歯だけでなく歯周病も予防できるため、ご検討ください。
よくある質問
初期の虫歯に関してよくある質問をまとめました。
- 初期の虫歯を治療するためにはフッ素を活用するとよいですか？
- 甘いものや完食を控えたほうがよいですか？
- 歯磨きはどのようにしたらよいですか？
初期の虫歯を治療するためにはフッ素を活用するとよいですか？
はい、フッ素の活用をおすすめします。フッ素は、ダメージを受けたエナメル質を修復させる作用を持ちます。また、歯質を強化して虫歯の発生を抑える効果も期待できます。
甘いものや間食を控えたほうがよいですか？
甘いものや間食を控えることで、初期の虫歯の自然治癒が促進されます。。反対に甘いものや間食を食べ続けると、口内に酸が増え、歯の表面が溶け始めて虫歯が進行します。
初期の虫歯と判断された場合は、なるべく甘いものや間食を控えましょう。
歯磨きはどのようにしたらよいですか？
歯の隅々まで歯ブラシを当て、力を入れすぎず、歯と歯の隙間も含めて丁寧に磨いてください。力を入れすぎると、歯や歯茎を傷つけてしまう可能性があるため、注意しましょう。
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まとめ
初期の虫歯とは、虫歯になる一歩手前の状態を指し、放置することでどんどん症状が悪化していきます。
下記の虫歯の初期症状に該当する方は、速やかに歯医者を受診しましょう。
- 甘いものや冷たいものがしみる
- 奥歯の溝が黒っぽくなる
- 歯の表面が変色する
- 歯と歯茎の隙間が白っぽくなる
- デンタルフロスが切れる
初期の虫歯は歯を削らなくても、歯にフッ素を塗ったり、クリーニングを行うことで治療できる場合があります。
虫歯を予防するためには、日々の歯磨きを徹底し、定期的に歯医者を受診してクリーニングを受けることが大切です。
虫歯は初期段階のうちに治療しておかなければ、症状がどんどん悪化し、痛みや腫れがひどくなります。
虫歯が重症化する前に、適切な治療を受けましょう。
