虫歯は進行度によって治療法が異なりますが、C4 は重度の虫歯で、大部分が溶けてしまい歯がほとんど無い状態です。
残っているのは根の部分になるため、多くの場合は抜歯が検討されます。
ただし、状態によっては歯を残すことができる場合もあり、できるだけその歯を長持ちさせるためにできる治療もあります。

そこで今回はC4 の虫歯の特徴と治療法、歯を長持ちさせる方法についてご紹介します。

歯の3つの構成

初めに、歯の基本的な3つの構成について解説します。

1 エナメル質

エナメル質は、歯の表面を覆っている部分で身体の中で一番硬い組織です。
非常に硬いエナメル質ですが、虫歯菌が出す酸に弱い特徴があります。

2 象牙質

象牙質はエナメル質の内部にあり、歯の主成分でエナメル質を支える大切な働きをしています。
象牙質の内部には歯の神経があるため、象牙質が露出すると知覚過敏の症状が出る場合があります。
また、虫歯が進行して象牙質まで達すると、痛みを感じるようになります。

3 歯髄

歯髄(しずい)は歯の中心にある歯の神経で、リンパ管や血管が通っており、象牙質に水分や栄養を送る働きがあります。
そのほかには、知覚神経があるため、歯にトラブルが起きた時は歯髄が痛みを感じ取ります。

虫歯になる3つの原因

虫歯になる3つの原因は、下記のとおりです。

1 糖質

食べ物の中に含まれている糖質は、細菌が酸を作り出す時の材料になります。
そのため、頻繁に糖分を含むおやつを食べる方や間食が多い方は虫歯になりやすい傾向にあります。

2 歯の質

虫歯のなりやすさは、歯の質によっても異なります。
歯の質は、成長過程で個人差があり、エナメル質や象牙質が成熟していない生えたての歯は虫歯になりやすい傾向があります。

3 細菌(虫歯菌)

細菌は、多い人と少ない人がいますが特に歯垢の中に潜んでおり、歯の表面に付着しています。
そして、糖分がある環境では、細菌が酸を発生させ歯の表面を溶かします。
その結果、カルシウムやリンが溶け出して歯がスカスカの状態になります。

虫歯の進行度と進行度別の治療法

虫歯の進行度と進行度別の治療法について、それぞれ解説します。

C0 初期のエナメル質の虫歯

歯の表面から少しカルシウムが溶け出して、白濁している状態です。
自覚症状はほとんどありません。

【治療法】
定期的に検診をしながら経過観察をします。
初期の虫歯にはフッ素塗布が有効のため、定期的にフッ素塗布をします。

C1 エナメル質の虫歯

歯の表面のエナメル質に細菌が感染して、歯が溶け始めている状態です。
灰色や薄茶色の穴が開いています。
自覚症状はほとんどなく、定期検診で指摘されることが多いでしょう。

【治療法】
エナメル質の虫歯の部分を削って白い樹脂の詰め物をします。

【治療期間】
樹脂の治療は1回で終わることが多いでしょう。

C2 象牙質の虫歯

エナメル質だけでなく、その内部の象牙質にまで虫歯が広がっている状態です。
黒くなったり、穴が開いたりしますが、象牙質はやわらかいため、虫歯の進行が早い特徴があります。
冷たい物や甘い物がしみるなどの症状を感じ始めます。

【治療法】
虫歯に感染した部分を削り、型取りをして部分的な被せ物をすることが多いです。

【治療期間】
歯を削る治療と型取りをする治療、部分的な被せ物をつける治療で2〜3回程度です。

C3  歯髄に達した虫歯

歯に大きな穴が開き、強い痛みを伴います。
象牙質よりさらに虫歯が進行して、歯髄に達している状態です
強い口臭がすることもあります。

【治療法】
この段階まで進行すると、すぐに被せ物はできず根管治療が必要です。
根管の中を洗浄・消毒をしてから、土台と被せ物を作製します。

【治療期間】
神経の治療が必要であり、歯の根の洗浄・消毒を行いますが、その洗浄・消毒だけで複数回の治療が必要となります。
根の中の症状によって回数は異なり、その後、土台や被せ物を作製するため、初期の虫歯と比べて治療期間が長くかかります。

C4  根だけ残った虫歯

虫歯で歯茎の上の歯質がほとんど失われている状態です。
C3では強い痛みを感じますが、C4まで進行し神経が壊死してしまうと痛みを感じなくなります。
この状態になると抜歯が検討されますが、状態によっては歯を残せる場合もあります。

【治療法】
抜歯が必要な場合には、抜歯をして消毒します。
その後、ブリッジ・入れ歯・インプラント治療を選択して治療するため、選んだ治療によって治療期間が異なります。
歯を残すことができる場合には、根管治療をします。

C4 になった歯の末路

C4の歯はどのようになってしまうのかご紹介します。

1.歯の根の下に膿が溜まる

虫歯が進行してほとんど歯の部分を失った場合でも、虫歯菌は生きています。
重度の虫歯の場合には、神経が壊死しているため、痛みの感覚がありませんが、虫歯がさらに進行して根の先に膿が溜まるケースもあります。

2.歯茎が腫れる

歯茎に膿が溜まって排出口がない場合は、歯茎が腫れてしまいます。
根の先に広がった細菌感染は、歯の周りの歯周組織にも及び、顎の骨を溶かしてしまうこともあります。
そのため、虫歯の歯だけでなく、周囲の歯の骨にまで悪影響を及ぼすため、早期に治療が必要な状態です。

3.歯が割れる

虫歯が悪化して神経にまで達すると、ズキズキした強い痛みを伴います。
さらに放置すると、神経が壊死してしまい、痛みを感じなくなります。
ただし、虫歯はさらに進行し続け、神経を失った歯は脆くなり、歯が割れることもあるでしょう。

4.歯が抜ける

神経が壊死すると痛みを感じなくなりますが、虫歯は悪化していきます。
そうすると、根の部分だけになり、ボロボロ崩れて抜け落ちてしまうこともあります。

歯が抜けたまま放置すると、周りの歯が少しずつ動いてそのすき間を埋めようとしますが、隣の歯が傾いて歯並びに悪影響を及ぼすこともあるため、早期に治療が必要です。

C4の虫歯が残せる場合に可能な歯髄再生治療とは

C4の虫歯は、残っている歯の部分が少ないため、抜歯が検討されることが多いですが、状態によっては残すことも可能です。
歯を残すことが可能な場合、歯髄の機能を回復する歯髄再生治療を行うことで、歯が長持ちしやすくなります。

歯髄再生治療は、かみ合わせに関係のない親知らずや乳歯などから採取した歯髄幹細胞を、歯髄が失われた歯に移植し、失った歯髄の機能を再生させる治療です。

幹細胞は、歯や身体の様々な部分に存在しており、周囲の組織を再生したり、修復を促す働きを持ちます。
歯科の分野では、歯髄幹細胞を使って歯髄の再生を促す「歯髄再生治療」が、2020年に実用化されました。

楽しくわかる歯髄と歯髄再生治療

歯髄再生治療のメリット

歯のトラブルの悪化を防ぐ

神経である歯髄を失うと、痛みや違和感などの知覚が無くなります。
痛みを感じられないため、歯にトラブルが起きた時でも気づきにくく、二次虫歯が悪化しやすくなります。
歯髄を再生すると、知覚が取り戻せるため、歯にトラブルがあった時に早期発見しやすくなります。

歯が長持ちしやすい

歯髄は、健康な歯を維持するために大切な役割を担っています。
水分や栄養を歯に送り届ける、細菌に対して抵抗する、周囲の象牙質の再形成を促すなどの機能を有し、歯を割れにくい状態に維持します。

歯髄再生治療の流れ

歯髄の機能を再生する歯髄再生治療の流れをご紹介します。

STEP1 精密検査
レントゲン撮影・CT撮影、口腔内診査をして、歯髄を失った状況を検討し、歯髄再生治療が可能かどうかを診断します。

STEP2 治療計画の説明
診断の結果、歯髄再生治療が適用になるかお伝えします。
治療可能な場合、治療計画を説明し、不安なこと、疑問を解決します。

STEP3 不用歯の抜歯・歯髄幹細胞の採取
親知らずなどの噛み合わせに必要のない不用歯を抜歯して、その中から歯髄幹細胞を採取し、十分な数になるまで培養します。

STEP4 根管治療
根の中を消毒する根管治療を行います。培養検査にて無菌状態を確認します。
この根管治療の精度で、歯髄再生治療の成功率が左右されるため、非常に重要な工程です。

STEP5 歯髄幹細胞の移植
歯髄幹細胞の培養と根管治療が完了した後、培養した歯髄幹細胞を根管内に移植します。
その後、歯の上部をバイオデンチンやレジンを用いて封鎖し、雑菌が入り込まないようにします。

STEP6 被せ物の装着
歯髄幹細胞の移植後、約1年間の経過観察期間が設けられます。この期間問題が生じなければ、被せ物が装着されて治療が終了します。
(被せ物が装着されるか否かは、治療する歯の部位や歯科医院によって異なります。)

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【まとめ】

虫歯が初期の段階では、小さな虫歯の部分を削って詰め物にする治療で済むことが多いため、歯の負担も通院の負担も軽減できます。

症状が進行し、C4の状態にまで悪化すると歯の大部分が失われてしまい、抜歯になるケースも少なくありません。しかし、状態によっては、保存ができる場合もあります。
大切な歯を長持ちさせるために、歯髄再生治療をすると、失われた歯髄の働きを再生させることができ、歯の強度を高められる可能性があります。

歯の機能を取り戻すために、歯髄再生治療を治療の選択肢にしてはいかがでしょうか。