乳歯は、6歳ごろから生え変わりますが、食事や会話をする時に必要なだけでなく、永久歯を正しい位置に誘導する役目もあります。
また近年、生え変わる乳歯を冷凍保管し、将来の再生治療に活かすこともできるようになりました。
そこで今回は、乳歯の役割・特徴や、乳歯保存と歯髄再生治療について詳しくご紹介します。
乳歯の役割
乳歯の大切な役割をご紹介します。
・咀嚼と発音の役割
永久歯と同じく乳歯には、食事を噛んで細かく砕く役割があります。
しっかり噛むことで、成長に大切な栄養を吸収することができます。
また、歯がないと滑舌が悪くなってしまいますが、歯があることできちんと発音することができるようになります。
・永久歯のガイドをする役割
乳歯は、永久歯が生えるためのガイドの役割があります。
虫歯などで早期に歯を失ってしまうと、隣あった歯が少しずつ動いてしまい、歯が生えるスペースが無くなって歯並びに影響を与えることがあります。
また、ガイドを失った歯は正しい位置に生えてこれず、歯並びが悪くなってしまう可能性もあります。
乳歯の特徴
乳歯の2つの特徴についてご紹介します。
乳歯のエナメル質は大人の歯の半分程度
乳歯は、永久歯と比較すると小さく、その分歯の表面の硬い部分の「エナメル質」が半分程度しかありません。
その内部の象牙質は柔らかく、虫歯になると進行が早い特徴があります。
そのため、乳歯が虫歯になってしまうと、進行が早く悪化しやすいです。
お子さんは痛みを上手く伝えることができない場合も多いため、定期的に検診をしてお口の状態を確認しておきましょう。
生えたばかりの歯は未成熟
生えたばかりの歯は、柔らかく未成熟なので、虫歯が歯を溶かしやすい環境です。
虫歯菌はお口の中の汚れの中にひそんでいて、糖分をエサに歯を溶かしてしまいます。
そのため、お口の中の汚れをキレイにすることも大切ですし、頻繁に糖分を摂取しないようにすることも重要です。
奥歯の溝や歯と歯の間など、虫歯になりやすい場所は丁寧に細かく磨くようにしましょう。
また、歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを十分に落とすことは難しいため、デンタルフロスを使って歯と歯の間の汚れを落としましょう。
また、おやつをだらだら食べる習慣は虫歯を促進してしまいます。
おやつを食べる時間をきちんと決めて、食べた後は歯磨きをするようにしましょう。
加えて、ジュースを習慣的に飲んでいるお子さんは虫歯のリスクが高くなります。
ジュースなどの糖分の多い飲み物を飲んだ後は歯磨きやうがいなどで対応しましょう。
乳歯の生え変わり時期
乳歯の生え変わり時期は個人差がありますが、6歳ごろから前歯の生え変わりが始まり、13〜14歳程度で7番目の歯まで生え変わります。
その後、親知らずは18〜20歳前後で生えることが多く、生えてこないケースもあります。
乳歯を保存する意義
生え変わる乳歯の中には、生きた歯の細胞が含まれています。この細胞は「歯髄幹細胞」と呼ばれ、私たちの身体の血管や神経を再生させる能力を持っています。
この細胞は、新しい再生医療にも使うことができるため、将来の再生医療に備えて冷凍保管する、という選択肢もあります。
(再生治療に活かすためには、企業が提供する細胞保管サービスの契約を行い、提携クリニックで抜歯を行う必要があります。)
ここでは、歯髄幹細胞と、この細胞を用いた再生医療についてご紹介します。
・歯髄幹細胞と再生医療
幹細胞は、臍帯血(さいたいけつ)や骨髄(こつずい)など、身体の様々な箇所に存在し、古くなった細胞の修復をしたり、新しい細胞を生み出す力があります。
医科・歯科の分野では、これらの幹細胞を用いて臓器や組織を修復する再生医療への活用も進められています。
中でも、乳歯や永久歯の中に存在する「歯髄(しずい)幹細胞」は、ほかの幹細胞と比較して採取時の身体への負担が少なく、「神経や血管」を再生させる能力が高いことが知られています。
この能力を活用した再生医療として、2020年には、「歯髄再生治療」が実用化されました。また、歯髄幹細胞は、脳梗塞・心筋梗塞・アルツハイマー病などの各種疾患に応用する研究が進められています。
歯髄再生治療とは?
歯髄は、歯の中に存在する神経や血管の集合組織で、歯への栄養供給や、傷ついた歯内部の硬組織(象牙質)を修復・再形成する働きを持ちます。
そのため、歯髄を抜く治療を行った歯は、虫歯が大きければ大きいほど大部分を削ってしまうためもろくなり、割れたり欠けたりするリスクが高まります。
歯髄再生治療は、親知らずや乳歯などの抜歯する歯の中から採取・培養した「歯髄幹細胞」の能力を活用し、失われた歯髄の再生を促進する治療です。
歯髄再生治療のメリット
歯髄が再生されると、歯への栄養や水分の供給が再開され、治療などで削られた象牙質の再形成が見込めます。
歯髄を抜く治療を行う際、歯の内部の細菌や汚れを除去するために、内部の硬組織(象牙質)が削られますが、一度削られた硬組織は、歯髄のない歯では再形成されません。
また、神経機能が失われると、歯にトラブルが起きた場合でも痛みを感じることができません。
そのため、二次虫歯が広がっていても気づかずに悪化してしまうこともあります。
歯髄再生治療を行うと、歯の神経・血管機能および象牙質の再形成能力の回復が期待できます。
これにより、もろくなって割れやすかった歯の強度が強くなるほか、知覚も取り戻すことができるため、歯にトラブルが起きても気づくことができ、悪化を防止できます。
歯髄再生治療のデメリット
・治療に時間が必要
・自由診療のため、費用が高額
・対応できるクリニックが限られている
歯髄再生治療を行う際、抜歯をした歯の中から歯髄幹細胞を採取して、培養・検査をする工程が発生します。個人差はありますがこの工程に約1〜2ヶ月程度時間がかかります。
また、歯髄幹細胞の移植後、約1年間の経過観察期間が設けられています。
そのほか、歯髄再生治療は自由診療のため、費用が高くなることがデメリットとして挙げられます。
また、新しい治療のため、どの歯医者でも治療ができるわけではなく、対応できる歯医者が限られています。
乳歯を保存して再生治療に活用するためには
抜歯した乳歯の歯髄幹細胞を将来の再生医療に利用するためには、まず乳歯の中の細胞を採取・培養し、冷凍保管する必要があります。
抜歯から歯髄幹細胞採取までの間の温度管理や衛生管理が重要となるため、保管のためには、
特定の提携歯科医院で抜歯をすることが条件になります。
・アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクの保管が必要
乳歯の場合、抜歯後すぐに再生治療を行う必要がないケースも多いでしょう。
しかし、細胞は徐々に老化してしまい、老化した細胞は組織再生能力や増殖能力が衰えていってしまうため、細胞を若くて元気な状態で保管しておくことが大切です。
アエラスバイオでは、歯髄幹細胞の採取・培養・検査ののち、半永久的に冷凍保管する細胞保管サービス(バンクサービス)を提供しています。
・バンク保管の流れ
STEP1 バンク契約
クリニックで抜歯する前に、アエラスバイオとのバンク契約を完了させる必要があります。まずは、バンクサービスの資料請求やお申込みをお願いします。
STEP2 カウンセリング・精密検査
提携歯科医院でのカウンセリングで抜歯予定の歯の状態を確認し、場合によってはレントゲン撮影をして、抜歯可否を判断します。
STEP3 提携歯科医院で抜歯
抜歯が必要な親知らずや乳歯などを抜歯します。
抜いた歯は、クリニックで専用の容器に入れられ、アエラスバイオに送られます。
なお、抜歯はアエラスバイオと提携しているクリニックで行う必要があります。
提携歯科医院は以下のページから検索いただけます。
<提携歯科医院リスト>
STEP4 専用の施設で歯髄幹細胞を取り出す
クリーンルームで、歯の中から歯髄幹細胞を取り出します。
STEP5 培養して保管
歯髄幹細胞を培養して、−150℃の液体窒素の中で冷凍保管します。
【まとめ】
お子さんの乳歯は、食べ物をしっかり噛んで栄養を補給するために、大切な役割を担っています。そのため、乳歯を健全に保つことは、お子さんの成長にとって重要です。
また、生え変わる乳歯の中には、将来様々な疾患の治療に用いることができる可能性がある「歯髄幹細胞」が存在します。
バンク契約締結後に提携歯科医院で抜歯を行うことで、内部の歯髄幹細胞を将来の再生医療に備えて冷凍保管することが可能です。
ぜひ乳歯を捨ててしまわず、バンク保管するという選択肢もご検討ください。