研究・論文

歯髄幹細胞に関する研究のまとめ(レビュー論文)

①歯髄幹細胞の中から「再生力の高い細胞」を見つける研究

研究成果の概要

歯髄幹細胞の中から、特に血管や神経の再生に優れた細胞を見つけ出し、その性質を詳しく調べた研究です。

研究背景

歯髄幹細胞は、さまざまな細胞に変化できる力を持っていますが、その中でも特に再生医療に向いている細胞を見つけることが課題でした。

研究成果の意義

CD31⁻/CD146⁻SP歯髄幹細胞とCD105⁺細胞という2つのタイプが、血管や神経の再生に役立つ成長因子を多く出し、さまざまな細胞に変化できることがわかりました。これにより、再生医療に使える「歯髄幹細胞の分取法」を特定することができました。

研究成果の詳細

  • 両細胞は、VEGF、BDNF、NGF、GDNFなどの成長因子を高いレベルで分泌(パラクリン効果・トロフィック効果)。
  • 脂肪細胞・象牙芽細胞・血管内皮細胞・神経細胞など、複数の細胞に分化できる能力(多分化能)を持つ。
  • 増殖力(自己複製能)や移動能力(遊走能)、細胞の死を防ぐ働き(抗アポトーシス)も確認された。

②足の血流障害を治すための血管再生(ラット下肢虚血モデル)

研究成果の概要

血流が悪くなったラットの足に幹細胞を移植し、血管の再生が促されるかを調べた研究です。

研究背景

血流障害による病気(たとえば糖尿病末梢循環障害)では、血管の再生が重要な治療の鍵になります。幹細胞がその助けになるかが注目されていました。

研究成果の意義

歯髄幹細胞を使うことで、血流の回復や毛細血管の増加が見られ、血管の再生を助ける力があることが示されました。

研究成果の詳細

  • CD31⁻/CD146⁻SP歯髄幹細胞とCD105⁺歯髄幹細胞をラットの足に移植。
  • 血流が改善し、毛細血管の数も増加。
  • 移植細胞は血管の近くにとどまり、VEGF-A、GM-CSF、G-CSF、MMP3などの因子を分泌。

③脳梗塞の回復を助ける神経再生(ラット脳虚血モデル)

研究成果の概要

脳梗塞を起こしたラットに幹細胞を移植し、神経の再生や機能回復が起こるかを調べた研究です。

研究背景

脳梗塞では、血流が止まった部分の神経がダメージを受けます。幹細胞がその修復を助けるかが注目されていました。

研究成果の意義

歯髄幹細胞を移植することで、神経のもとになる神経幹細胞・前駆細胞が集まり、神経に変化していく様子が確認されました。脳のダメージも小さくなり、運動機能も改善しました。

研究成果の詳細

  • CD31⁻/CD146⁻SP歯髄幹細胞またはCD105⁺歯髄幹細胞をラットの脳虚血モデルに移植。
  • 神経幹細胞・前駆細胞の移動と分化が促進され、梗塞領域が縮小。
  • VEGF、BDNF、GDNF、NGFなどの神経栄養因子が分泌されていた。

④歯の神経を再生する歯髄再生(イヌ抜髄モデル)

研究成果の概要

イヌの抜髄歯に幹細胞を移植し、歯髄が再生するかを調べた研究です。

研究背景

虫歯や外傷で失われた歯の神経を、本来の形で再生することはこれまで難しいとされてきました。

研究成果の意義

歯髄幹細胞を使って、血管と神経を含む歯髄のような組織が再生され、石灰化せずに柔らかい組織として保たれたことが確認されました。

研究成果の詳細

  • CD31⁻/CD146⁻SP歯髄幹細胞またはCD105⁺歯髄幹細胞を、コラーゲンとともにイヌの歯の根管内に移植。
  • 血管と神経を含む歯髄様組織が再生。
  • 移植細胞はSDF-1に反応して損傷部位に集まり、再生をサポート。

参考文献

Nakashima M, Iohara K, Sugiyama M. Human dental pulp stem cells with highly angiogenic and neurogenic potential for possible use in pulp regeneration. Cytokine Growth Factor Rev. 2009 Oct-Dec;20(5-6):435-40. doi: 10.1016/j.cytogfr.2009.10.012. Epub 2009 Nov 6. PMID: 19896887.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19896887/

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