
本論文の概要
本研究では、同一のブタ個体から採取した歯髄・骨髄・脂肪組織由来の幹細胞を比較し、それぞれの再生能力(血管新生、神経再生)を評価しています。結果として、歯髄幹細胞が、他の組織由来の幹細胞よりも高い再生能力を持つ可能性が示されました。
研究背景
幹細胞は、虚血性疾患や神経障害などの再生医療において有望な治療手段の1つになると期待されていますが、その再生能力は幹細胞がどの組織由来のものかによって異なる可能性がありました。また、これまで異なる個体や異なる条件で採取された幹細胞の比較は行われてきましたが、同一個体から同一条件で採取された幹細胞の比較データはほとんどありませんでした。
本研究では、歯髄・骨髄・脂肪という異なる3つの組織から、同一個体・同一条件で幹細胞を採取・培養し、それぞれの再生能力を公平に評価することで、各組織由来幹細胞の違いを明らかにすることを目的としました。
研究結果の意義
本研究では、歯髄幹細胞が、骨髄や脂肪組織由来の幹細胞と比較して、血管新生、神経再生において優れた能力を持つことが示唆されました。特に、歯髄幹細胞は、より多くの成長因子や神経栄養因子を分泌し、虚血性疾患モデルや歯髄再生モデルにおいて、他の細胞よりも高い治療効果を示しました。
これらの結果から、歯髄幹細胞は、再生医療における有望な細胞源となる可能性が見出されました。
詳細
モデル動物(虚血疾患、抜髄歯)を用いた実験の結果
- 虚血疾患モデルでは、血管新生・神経再生ともに「歯髄>骨髄>脂肪」という結果が示された。
- 歯髄再生モデルでは、再生組織量、血管新生・神経再生能力いずれも、歯髄幹細胞が最も優れていた。
- 歯髄再生モデルにおいて、再生した組織は歯髄マーカーを発現しており、炎症やアポトーシスも少なく、生体への安全性が確認された。
参考文献
Ishizaka R, Hayashi Y, Iohara K, Sugiyama M, Murakami M, Yamamoto T, Fukuta O, Nakashima M. Stimulation of angiogenesis, neurogenesis and regeneration by side population cells from dental pulp. Biomaterials. 2013 Mar;34(8):1888-97. doi: 10.1016/j.biomaterials.2012.10.045. Epub 2012 Dec 11. PMID: 23245334.