歯髄(しずい)とは?
歯髄(しずい)とは、細かい血管や神経・リンパ管などが集まった組織で、歯の中心部に存在しています。
一般的には、『歯の神経』と呼ばれています。
歯の心臓部である歯髄は、硬度の高い『エナメル質』や『象牙質』によって守られています。
歯髄の役割
歯髄には、いくつかのとても重要な役割があります。
- 歯に栄養や水分を補給する
- 痛みによって、虫歯や歯周病などの歯のトラブルを伝える
- 細菌感染に抵抗して、虫歯の進行を防ぐ
- 傷ついた歯の組織を修復し、歯に強度を与える
- クッションの役割を果たし、歯と歯茎への衝撃を防ぐ
歯髄を除去する(歯の神経を抜く)と、どうなる?
歯髄を除去する(歯の神経を抜く)と、次のようなトラブルが発生する懸念があります。
- 歯髄本来がもつ、栄養供給能力や細菌への抵抗力、組織修復能力などが失われる
- 栄養供給が止まり、歯が変色する場合がある
- 歯根の成長が止まったり、歯の強度が低下して、将来折れるリスク・抜歯に至るリスクが高まる
- 痛みなどの痛覚を感じないため、歯が虫歯や病気になっても気づけない
歯髄を失うと歯を失う可能性が高くなる
公益財団法人 8020推進財団の調査によると、抜歯の原因で、最も多かったのは歯周病(37.1%)で、次いで、う蝕(29.2%)、破折(17.8%)となっています。
(8020推進財団(2018)第2回 永久歯の抜歯原因調査)
歯髄を失うと、歯髄の持つ栄養・水分供給能力が失われるほか、歯の内部に侵入した細菌への抵抗力が低下します。さらに、痛みなどの痛覚を感じなくなるため、う蝕(虫歯)に気付くのが遅れ、気づいたときには重症化しているケースも少なくありません。
結果、歯を抜かなくてはいけないということが起こりうるのです。
また、抜歯の原因3位の「破折(はせつ)」は歯が折れることです。
神経を抜く治療で歯が削られ、歯の厚み・歯の強度が低下し、クッションの役割を果たしていた歯髄が失われることで、歯が折れるリスクが高まります。
歯髄を失うケース
歯髄は、虫歯の治療(歯の神経を抜く治療)で除去して失われる他に、転ぶなどして、歯髄の一部または、全ての機能が失われるケースもあります。
歯髄の重要性
歯髄は、歯の健康を維持するための重要な役割を果たします。
歯髄が存在することで、歯の異常を早期に感知し、症状が軽度なうちに治療を受けることが可能になります。
歯髄を失った歯は、強度が低下し、折れやすくなることが知られています。
これは、歯髄が歯の内部構造を支え、歯の強度と耐久性を維持する役割を果たしているためです。
歯髄には、その周囲を覆う硬組織である「象牙質」を修復する能力を持っています。歯髄を失うと、栄養・水分供給能力のほか、この象牙質修復能力が喪失するため、歯は折れやすくなります。
折れた歯は、修復が困難であるため、抜歯に至る可能性が高くなります。
また、歯髄は口内の細菌やウイルスから歯を守る防御壁として機能し、感染症を防ぎます。
あまり知られていませんが、歯の細菌感染は、全身の健康に影響を及ぼす可能性があります。細菌が血管やリンパ管を通じて全身に広がると、心臓病や糖尿病、呼吸器疾患、脳卒中などの全身疾患の発症リスクが高まることが示唆されています。
歯髄の健康を維持することは、全身の健康を維持するためにも非常に重要です。