親知らずの抜歯後に、痛みや腫れなどのトラブルが起こらないか、不安な方もいるのではないでしょうか?想定していなかった抜歯後トラブルを経験された方が身近にいれば、その不快だった経験を聞き、過度に恐れてしまうことがあるかもしれません。
しかし、親知らずの抜歯は頻度も数も多く、手軽な手術です。抜歯後に起こるトラブルの可能性がゼロとは言えませんが、重く考えすぎて、抜歯のタイミングを逃しても、良くありません。「後々起こるであろう、どのようなリスクを減らすために親知らずを抜くのか」をしっかり考えて、決断しましょう。
親知らずの抜歯は、ほとんどの場合が安全に終わり、順調に治癒していきます。
本記事では
・親知らずの抜歯後に注意したいポイント
・抜歯後に痛みを感じる期間
について解説します。
また、抜歯後の順調な治癒をより確実にするために是非ご参考ください。
親知らずの抜歯後に注意すべきこと
親知らずの抜歯後は以下の点に注意して生活しましょう。
- 過度にうがいしない(血餅が剥がれて出血が長引くため。)
- 長時間の運動・入浴・飲酒を控える(腫脹がひどくなるため。)
- 喫煙を控える(創部の粘膜化が遅れ、痛みが持続するため。)
- 抜歯箇所に刺激を与えない(痛みを誘発し、縫合糸が外れると傷が開くため。)
- 麻酔が切れる前に食事しない(温度感覚がなく、火傷に気が付けないため。)
- 食事の内容と食べ方に注意する(治療部位への刺激を少なくするため)
- 処方された薬は用法用量を守る(術後の痛み、術後感染の元になるため。)
- 抜糸後は抜歯窩を綺麗にする(術後の感染防止対策のため。)
親知らず抜歯後に抜歯箇所を刺激すると、傷の治りが遅くなり、細菌感染のリスクが高まるため、安静に過ごしましょう。また、親知らずがどういうものかについて、詳細を知りたい方は下記の記事をご覧ください。
親知らずとは?起こりうるトラブルや抜歯の注意点を解説します | アエラスバイオコラムサイト (aerasbio.co.jp)
過度にうがいしない
親知らずを抜歯すると、抜歯箇所から出血が起こるため、うがいしたくなります。しかし、過度にうがいをすると、抜歯後創部(手術でできた創(きず)の部分)にできた血餅(血の塊で出来た止血ための蓋)が剥がれ、出血が持続することになります。出血する場合は、まずガーゼを追加で30分強く咬みましょう。
また口腔内には唾液が豊富に存在します。そこにわずかな出血が混じるだけで、唾液ごと全部赤くなります。これは抜歯後出血には該当しません。歯科医院に見せに行っても、「ガーゼを咬んでいてくださいね。」で終わるでしょう。
ただし、水道の蛇口を開いたように、血が飛び出てくる場合は、追加で止血処置が必要になりますので、抜歯した医院にお問い合わせください。
抜歯当日は血の味がしますが、翌日には止血できていることがほとんどです。
血餅が流され、抜歯箇所の骨がむき出しになると、「ドライソケット」と呼ばれる症状が起こり、激しい痛みが起こることがあります。
そのため、親知らずの抜歯後は過度にうがいをしないようにしましょう。
長時間の運動・入浴・飲酒を控える
親知らずを抜歯した日に長時間の運動や入浴、飲酒をしてしまうと、血行が良くなり、出血が止まらなくなるおそれがあります。
また、患部に痛みが出たり、腫れたりする場合もあるでしょう。親知らずを抜歯した後は、激しい運動を避け、湯船には浸からないようにすることをおすすめします。
また、痛み止めや抗生剤を服用している間は、飲酒も控えておきましょう。
喫煙を控える
喫煙をすると、たばこに含まれるニコチンが血管を収縮させ、傷の治りが遅れるおそれがあります。
また、免疫力が低下し、細菌感染のリスクが高まるため、親知らず抜歯後の喫煙はお控えください。
抜歯箇所に刺激を与えない
抜歯箇所を舌や指で触ると、細菌が侵入したり、血餅が剥がれ落ちたりします。抜歯箇所が気になっても、決して触らないようにしましょう。
麻酔が切れる前に食事しない
親知らず抜歯後、麻酔が切れる2〜3時間の間は、抜歯箇所周辺の感覚が麻痺しているため、食事をしないようにしましょう。
麻酔がかかっている状態で食事をすると、知らない間に頬粘膜や唇を咬んで、傷を作ってしまうことがあります。温度感覚もないので、熱い食べ物を食事した際、火傷にも気が付きません。
どうしてもお腹がすいた場合は、噛まずに食べられるゼリーやスープなどを食べましょう。
食事の内容と食べ方に注意する
親知らずの抜歯後は、食事の内容と食べ方に細心の注意を払う必要があります。
手術直後は、出血や痛みがあるため、固い食べ物や刺激の強い食べ物は避けましょう。
具体的には、柔らかく、冷たくて飲み込みやすいものが適しています。例えば、おかゆやスープ、ヨーグルト、プリン、ゼリーなどがおすすめです。硬い食べ物やスパイシーな料理、炭酸飲料、アルコールは傷口に負担をかけ、回復を遅らせる可能性があるため避けましょう。
食べ方にも気をつける必要があります。できるだけ抜歯した歯の反対側で食べ物を噛むようにしましょう。
強く噛むことで、抜歯後の傷口に負担がかかるため、柔らかいものを選び、ゆっくりと食べることが大切です。また、食後は口の中を清潔に保つために、ぬるま湯でやさしくうがいをするよう心がけてください。
処方薬は用法用量を守る
薬にもよりますが、基本的には「鎮痛薬・抗菌薬を1日3回3日分、食後内服の指示」の場合が多いです。特に抗菌薬は細菌感染の防止や炎症を抑える目的があります。処方された薬は必ず全て服用するようにしましょう。
口腔内には細菌が多数存在しています。抜歯後、創部にも細菌が入ってきますが、そこを化膿させない目的で処方される薬が抗菌薬です。
また、抜歯後に感染が原因で創部に腫脹が出現することもあります。
その場合は、追加で抗菌薬を使用する必要が出てきます。治癒も遅れ、不快症状も長引きますので、処方薬は用法容量を守りましょう。
抜糸後2〜3週間程度は抜歯窩を綺麗にする
抜歯窩(ばっしか)とは、歯を抜いた後の歯茎の穴のことをいいます。一般的に抜歯をして一週間後くらいに、縫合された糸を除去する・術後の経過を確認するタイミングがあります。そこからは抜歯窩に食塊をため込まないよう含嗽(口の中に水や薬を含んでゆっくりと喉をゆすぐこと)などで、綺麗にしましょう。
抜歯窩を清潔にしていないと術後感染し、腫脹することがあります。その場合は追加で抗菌薬を使用する必要が出てきます。治癒も遅れ不快症状も長引きますので、抜歯窩は綺麗にしましょう。2〜3週間程度で創部に食塊が溜まらないようになります。
親知らず抜歯後の痛みの期間
親知らずの抜歯後に感じる痛みの期間は、個人差があるものの、通常は数日から1週間程度続きます。
抜歯直後から1〜2日が痛みのピークで、特に強い痛みを感じることが多く、鎮痛薬の使用で痛みを和らげることができます。
3日目以降には痛みが次第に軽減し、1週間程度でほとんどの患者が痛みを感じなくなります。
ただし、親知らずの埋まり具合や歯の位置によっては、外科的な処置が必要な場合があり、その場合は痛みが長引くこともあります。例えば、骨を削ったり、歯肉を切開したりしたケースでは、通常よりも強い痛みや腫れが生じる傾向があります。このようなケースでは、1〜2週間程度の痛みが続くこともあります。
痛みが長引く場合や、抜歯後数日してから急激に痛みが増す場合は、感染やドライソケット(血餅が取れてしまう状態)の可能性があるため、早めに歯科医を受診することが重要です。
親知らずの抜歯後にトラブルが起きた場合の対処法
親知らずの抜歯後にトラブルが起きた場合は、以下の症状に応じて適切に対処しましょう。
- 痛み
- 腫れ
- 出血
- その他の症状
事前に痛みや腫れなどのリスクを想定し、対処法を把握しておくことが大切です。
痛み
痛みが起きた場合は、処方された痛み止めを服用してください。親知らず抜歯後の痛みはおおよそ2〜3日で治まりますが、もし4日以上経過しても痛みが続く場合は、歯科医院を受診してください。
腫れ
腫れが起きた場合は、アイスパックや冷却シートを頬に貼ることで最小限に抑えられます。しかし、頬を冷やしすぎると血行が悪くなり、傷の治りが遅くなるおそれがあるため、20分冷やした後は20分間外す、などの工夫をしましょう。
出血
出血が多い場合は、まずガーゼを30分強く咬みましょう。
どうしても出血が止まらない場合は、歯科医院を受診してください。
その他の症状
時には、発熱や軽いしびれ、乾燥や喉の痛みなどが起きる場合もあります。いずれも親知らず抜歯後1〜3日程度経つと治まりますが、もし症状が続く場合は、速やかに歯科医院を受診してください。
親知らず抜歯後のブラッシング方法
親知らずの抜歯後は、以下のブラッシング方法を実践しましょう。
- 縫合糸に触れないようにする
- 抜歯箇所に歯ブラシを当てない
- ブラッシング後にうがいをしすぎない
ブラッシングする際は、抜歯箇所に触れないよう慎重に磨きましょう。歯磨きの後にうがいをしすぎないことも大切です。抜歯の翌日には血餅がしっかりしますので、翌日からは、うがいは普段通りにできます。
縫合糸に触れないようにする
親知らずを抜歯した後に糸で縫合している場合は、歯ブラシで糸を引っ張ることがないようにしましょう。縫合糸が切れると、粘膜の回復が遅れる恐れがあります。注意してください。
抜歯箇所に歯ブラシを当てない
親知らずを抜歯した箇所に歯ブラシを当てると、血餅が剥がれてしまい、ドライソケットになるおそれがあります。また、出血する原因にもなるため、注意しましょう。
ブラッシング後にうがいをしすぎない
ブラッシング後にうがいをし過ぎると、血餅が剥がれてドライソケットになるおそれがあります。
もし、抜歯箇所に食べかすが溜まったとしても、無理に取り除こうとすると傷口に刺激が加わり、傷の治りが遅くなります。
抜歯箇所付近に溜まった食べかすが気になる場合は、歯科医院で取り除いてもらいましょう。
親知らずの抜歯後におすすめの食事
親知らずを抜いた後の食事は、刺激物は控えるのが望ましいですが、抜歯後に咀嚼して痛くなければ、特に制限はありません。
抜歯後の腫脹で開口障害が起こることもあります。その際は、咀嚼すると痛みが感じる時もありますので、咀嚼回数が少なくても摂取できる食事を召し上がってください。
以下の食事であれば食べやすいでしょう。
- ヨーグルト
- キウイ
- 親子丼
- お茶漬け
- シチュー
いずれも食べやすく、栄養補給がしやすい食事です。積極的に摂り入れましょう。
ヨーグルト
ヨーグルトは、カルシウム・乳酸菌・脂質・タンパク質・糖質などが含まれるため、免疫力の向上にもつながります。また、飲み込みやすいため、抜歯後の痛みが続いて食欲不振の際におすすめです。
キウイ
キウイは、ビタミンC・食物繊維・鉄分・ミネラルなどの栄養素を多く含み、飲み込みやすいため、おすすめです。
親子丼
鶏肉と卵が中心となっているため、カルシウムやタンパク質などの栄養がしっかり補給できます。
具材が柔らかいため、親知らずを抜歯後でも食べやすいといえるでしょう。
お茶漬け
具材を調整すれば、栄養補給がしやすくなります。あまり噛まなくても食べられるため、親知らずを抜歯後でも問題ないでしょう。
シチュー
野菜の栄養を摂取しやすく、スプーン一口で食べられるため、親知らずを抜歯後におすすめです。
親知らずの抜歯後は歯髄幹細胞をバンクで保管する
歯髄幹細胞のバンク保管とは、将来の自分や家族の健康のために、歯髄(歯の中の血管・神経組織)内部の幹細胞を半永久的に凍結保管しておくサービスです。
親知らずや乳歯などから歯髄幹細胞を採取・培養し、将来の再生医療等に備えて凍結保管できるのが特徴です。
保管した歯髄幹細胞を、失活歯(歯髄の機能が失われた歯)の根管内に移植することで、失われた歯髄および周囲の象牙質を再生できます。
親知らずの抜歯は、歯に眠る財宝を保管できる大事なチャンスなので、ぜひバンク保管を検討してみてください。
歯髄幹細胞をバンク保管する方法については、下記リンクをご覧ください。
バンクとは » 抜ける歯で未来を彩る|アエラスバイオ株式会社
まとめ
親知らずを抜歯後は、抜歯箇所に刺激を与えないようにすることが大切です。うがいをなるべくせず、長時間の運動・入浴・飲酒や喫煙を避けておきましょう。
もし痛みや腫れなどの症状が出た場合は、痛み止めを服用したり、頬に冷却シートを貼ったりして対処してください。
親知らずを抜歯後は、トラブルが起きないよう、安静に過ごしましょう。