虫歯は、自覚症状が少ないため、進行しても気づかないことがあります。
痛みが出た時には、かなり悪化していたということも少なくありません。
そのため、定期的に検診をして、虫歯の有無を確認することが大切です。
そこで今回は、虫歯になりやすい人の特徴と、悪化した時に歯の寿命を伸ばす方法についてご紹介します。

虫歯になる3つの原因

虫歯になる3つの原因についてご紹介します。

1 ミュータンス菌

ミュータンス菌は、一般に虫歯菌と呼ばれる菌で、歯垢の中で歯の表面に付着し、糖質から歯を溶かす酸を作り出します。
この酸は、カルシウムやリンを溶かして、歯をもろくしてしまいます。
唾液には歯を修復する働きがあるため、すぐに穴があくわけではありません。
しかし、頻繁に糖分が口の中にある状態が続くと、唾液による修復機能が追い付かず、虫歯が悪化してしまいます。

2 歯の質

歯が形成される時の環境にもよりますが、歯の表面のエナメル質や内部の象牙質の状況によっては、虫歯になりやすい歯もあります。
特に、お子さんの乳歯や生えたばかりの永久歯はまだ成熟しておらず、虫歯になりやすいため、注意が必要です。

強い歯を形成するためには、カルシウムやリンと良質なたんぱく質、これらが上手く働くためのビタミンA、ビタミンC、ビタミンDなどの各種栄養素が必要となるため、バランスの良い食事が大切です。

3 糖質

糖質は上述したミュータンス菌(虫歯菌)が酸を作り出す時に使われます。
そのため、糖分の多いジュースを頻繁に飲む方や間食が多い方は、酸にさらされる時間が多いので、虫歯のリスクが高まります。

虫歯の進行

C1 歯のエナメル質に小さな穴が開きます。
自覚症状がほとんどないため、自分で気づくことが難しい状態です。

【治療法】
虫歯の部分を削って、白い詰め物で詰める治療をします。
  
C2  エナメル質の内部の象牙質まで虫歯が進行している状態です。
  象牙質はエナメル質よりもやわらかいため、進行が早い特徴があります。
  冷たい物や甘い物がしみるようになります。

【治療法】
虫歯に感染した部分を削って、部分的な被せ物の治療をします。

C3 歯髄(しずい)の近くや歯髄まで虫歯が進行している状態です。
  歯髄が炎症を起こしているため、ズキズキした強い痛みを感じます。

【治療法】
感染している部分を除去する必要があり、大きく歯を削らなくてはならないこともあります。
また、虫歯が歯髄に達して進行している場合、歯髄を抜き(抜髄)、歯の根の中を洗浄する治療(根管治療)が必要となります。
この治療の際、歯の根の中の感染部分が削られることで、歯の強度が低下するリスクがあります。

C4 歯全体が虫歯菌に感染している状態です。
  根の先に膿が溜まっていることもあり、歯を残すことが難しい状態です。
  歯髄が死んでいることが多く、以前は感じていた強い痛みが無くなっていることもあります。これは、歯髄の中の神経が壊死することで、知覚機能が失われるためです。

【治療法】
歯を残すことが難しいため、多くの場合抜歯が必要となります。
ただし、根の先の膿や感染部分を取り除けた場合は、歯が残せる場合もあります。

虫歯になりやすい人の特徴

虫歯になりやすい人の特徴についてご紹介します。

遺伝的に歯の質が弱い

歯の質は遺伝的な要素があると考えられており、虫歯になりやすい両親から生まれたお子さんは歯の質が弱い傾向にあります。
また、親子では食習慣が似ていることが多いため、虫歯によくなる方と生活をともにしているという環境的な要因も考えられるでしょう。

歯並びが悪い

歯並びが悪く凸凹していると、その部分に汚れが残りやすくなり、歯ブラシも当たりにくくなります。
そのため、虫歯のリスクが高くなり虫歯ができやすくなる傾向があります。

歯磨きの仕方がよくない

虫歯菌がひそんでいる歯垢が残ったままになると、虫歯菌が糖分を栄養にして酸を発生させます。
そのため、虫歯菌が減少するように、歯垢を取り除くことが大切です。
しかし、歯磨きが苦手な部分には汚れが残りがちで、丁寧に磨いていても虫歯ができやすい部分もあります。

甘い物を頻繁に食べる

前述の通り、虫歯菌は糖分を栄養にして歯を溶かす酸を発生させます。
そのため、甘い物が頻繁にお口の中にある状態は虫歯のリスクが高くなります。

口呼吸をしている

口呼吸をするとお口の中が乾燥しやすくなり、細菌が増殖しやすい環境となってしまいます。
また、唾液には汚れを流す作用や、歯を修復する再石灰化を促進する作用がありますが、口呼吸をしていると、これらの働きが弱くなってしまいます。

虫歯を予防するためには

虫歯を予防するためにできることについてご紹介します。

歯磨きの習慣を変える

磨き残しの多い歯磨きの習慣を変えて、正しい歯磨きの方法を身につけましょう。
歯ブラシだけでは磨きにくい歯と歯の部分は、デンタルフロスや歯間ブラシなどを併用しましょう。

また、歯並びの関係で歯が重なっている部分は、毛束が1つになっているタフトブラシで磨くことがおすすめです。毛束が1つに集まっていることで、ピンポイントに汚れを落としやすいことが特徴です。
また、歯を1〜2本ずつ細かく磨くことや磨く順番を決めて正しい歯磨きを習慣化することも大切です。

食後に歯磨きをすることが難しい場合には、口をゆすぐだけでも効果が得られるため、うがいをするようにしてください。

間食の頻度や食生活を変える

間食が多い方は、お口の中が酸性になりやすく、虫歯ができやすい状態が続いてしまいます。
そのため、間食を取るタイミングを決め、ダラダラと長時間食べないようにしましょう。
また、キシリトールの入ったガムは虫歯予防の効果もあるためおすすめです。

プラークコントロール

虫歯菌をできるだけ減らすために、毎日のプラークコントロールが大切です。
セルフケアだけでは難しい場合には、定期的に歯科医院での検診を受けましょう。
普段落とせない部分の汚れを除去することができますし、汚れがついている部分の磨き方や落とし方も確認することできます。

フッ素を取り入れる

フッ素には、「虫歯菌を抑制する働き」「歯を強くする働き」「再石灰化を促進する働き」があります。
歯磨き粉に含まれている物もあり、手軽に取り入れられるため、歯磨き粉を選ぶ時はフッ素濃度の高い物を選びましょう。
日本で販売されている歯磨き粉の場合、高濃度のフッ素入り歯磨き粉は1450ppm程度です。

また、歯科でフッ素を塗布する場合は濃度が高いため、3ヶ月に1度程度の塗布でよいとされています。
そのため、定期検診と一緒にフッ素を取り入れてみるのもおすすめです。

虫歯が歯髄まで進行すると

虫歯の感染が広がって、歯髄まで到達してしまうと、歯髄を抜く必要があります。
歯髄を抜くと、下記のようにさまざまなデメリットがあります。

・歯が弱くなる
・痛みを感じなくなる
・歯が変色する場合がある

・歯が弱くなる

歯髄には、歯に水分や栄養を送り込む働きがあります。また、細菌感染等で傷ついた象牙質を再形成する働きも担っています。
そのため、歯髄を抜くと歯に栄養が行き渡らなくなり、歯髄を抜く際に削られた象牙質も再形成されないため、歯が弱くなってしまいます。

・痛みを感じなくなる

痛みはわずらわしい物に感じがちですが、歯のトラブルを伝える大切な役割があります。
歯の神経である歯髄が無ければ、歯に異常が起きても、痛みを感じないため悪化しても気づかない可能性があります。

・歯が変色する場合がある

歯髄を失った歯は血液循環が止まるため、残留した血液成分や変色したタンパク質などが蓄積され、歯が茶色や黄色に変色することがあります。
一度変色した歯は自然に元に戻ることはないため、ウォーキングブリーチなどの治療が必要となります。

歯髄を再生させるためには

歯髄の役割と歯髄を再生させる方法についてご紹介します。

歯髄の役割とは

歯髄は、歯の内側で歯の神経や血管が集まっている部分です。
歯の根の先に伸びて、身体の組織とつながっています。

歯髄には、歯に水分や栄養を運ぶ、免疫機能により細菌の感染拡大を防ぐ、傷ついた象牙質を修復して歯の強度を保つ、歯の異常事態を痛みにより伝えるなど、さまざまな機能があります。

歯髄を抜かなければいけないケースとは

歯髄を取り除くことになってしまう原因多くは、歯の内部で広がった虫歯です。
虫歯は、初期の段階では歯の表面の固い部分だけですが、進行するとその内側の象牙質、歯髄まで広がり、強い痛みを伴います。
その場合、歯髄を抜く治療が必要です。

そのほかには、歯周病が悪化すると歯周病菌が根の中まで侵入して、歯髄の細菌感染を起こす可能性もあります。

また、転倒やスポーツ中の接触などで、歯を強くぶつけた場合にも歯髄が壊死してしまうことがあります。
このような場合にも、神経を抜く処置をして、根の内部を消毒する根管治療が必要となります。

失った歯髄を再生する歯髄再生治療

歯の神経を抜く治療をすると、歯髄の働きがすべて失われてしまいます
歯に血液や栄養が行きわたらなくなるほか、治療の際に歯が削られて脆くなるため、歯が欠けたり、割れたりするリスクが高まります。
また、茶色や黄色に歯が変色してしまうこともあります。
さらに、神経を抜いた後の歯の被せ物のすき間から虫歯菌が入り込み、根の先に膿が溜まってしまうこともあります。

これらの問題を解決するのが、「歯髄再生治療」です。
かみ合わせに必要のない歯を抜いて、その歯から歯髄幹細胞を採取して培養し、歯髄を失った歯に移植することで歯髄の機能を取り戻す治療です。

歯髄を失う前と同様に、歯の栄養や血液を供給することができ、治療で削られた象牙質も再形成し、健康な歯を取り戻すことが可能です。
また、二次虫歯などのお口のトラブルも痛みとして感じることができるため、手遅れになる前に治療することができるなど、歯の寿命を延ばすことにつながります。

楽しくわかる歯髄と歯髄再生治療

歯髄幹細胞を保存しておくためには

歯髄再生治療を受けるためには、抜歯する歯から採取した歯髄幹細胞が必要となりますが、この治療を受ける際に必ずしも抜歯可能な歯があるとは限りません。
そこで、抜歯を行うタイミングで歯髄幹細胞を採取・保管し、将来の再生治療に備えておくことができるようになりました。

アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクは、抜歯する乳歯や親知らず、矯正治療における便宜抜去歯などから歯髄幹細胞を採取・培養し、検査を行ったのちに半永久的に細胞を冷凍保管するサービスです。若い時の細胞を冷凍保管しておくことで、将来年齢を重ねてから、若い細胞を用いた治療を行うことも可能となります。

バンクサービスの詳細は、以下のバナーからご確認いただけます。

漫画用バナー小_2話3

【まとめ】

虫歯のなりやすさには、口腔内のミュータンス菌の量や遺伝的な歯の質、普段からの糖質の摂取量などが関係しています。

虫歯が進行すると歯の神経である歯髄を失うことになり、さらに進行すると歯そのものを失ってしまうことに繋がります。

しかし、近年では失われた歯髄を「歯髄再生治療」により取り戻すことが可能となりました。
これにより、歯の強度低下を抑制し、歯が失われるリスクを下げることが期待できます。

歯髄再生治療に使う歯髄幹細胞は、抜歯する歯から採取する必要がありますが、バンクサービスで事前に冷凍保管しておくこともできます。人生100年時代、いつまでも健康な歯を保つことができるよう、様々な選択肢を検討していきましょう。