矯正治療は、気になる歯並びを整えることができる治療です。歯並びによっては、歯を並べるスペースを確保するために「抜歯」が検討される場合があります。

健康な歯を抜歯するのには抵抗がある…という方も多くいらっしゃると思いますが、実はその抜歯した歯を再生治療に活用できる方法があります。
そこで今回は、矯正で抜歯した歯を活用できる歯髄再生治療についてもご紹介します。

矯正治療で抜歯が必要な4つのケースとは

矯正治療で抜歯が必要になるケースにはいくつか理由がありますので、ご紹介します。

1 抜歯をしないと口元が出てしまう

矯正治療で抜歯が必要なケースで、無理に歯を並べようとすると、口元が出てしまう可能性があります。
これは、「出っ歯」や「叢生(そうせい)」の場合に起きやすいと言えます。

正面から見た時に歯並びは並んでいても、口元が出ていると、審美性が良くありません。
矯正治療は、横顔のラインも考慮して歯並びを整えていきます。

2 親知らずが歯並びを乱している

親知らずが手前の歯を押してしまい、歯並びが悪くなっている場合には抜歯が検討されます。
親知らずは、一番最後に生えてくる歯のため、スペースが足りずに斜めや横に生えてくることも少なくありません。
この場合には、歯並びにも影響を及ぼしやすく、矯正治療をした時に歯並びに悪影響が出る可能性があります。
歯並びが整っても、後戻りの可能性もあるため、親知らずが歯並びを乱している場合には、抜歯が検討されます。

3 上下の噛み合わせのバランスが悪い

出っ歯や受け口、歯の凸凹が大きい歯並びの場合には、上下の噛み合わせのバランスが悪く、抜歯が必要なケースが多くなります。
抜歯をしてスペースを確保することで、口元が出ている歯並びも整えながら、横顔のバランスも整えていきます。
また、見た目だけでなく、噛み合わせのバランスを整えることも重要で、抜歯したスペースを利用して噛み合わせのバランスも整えていきます。

4 顎が小さく、歯が並ぶスペースが足りない

日本人は顎が小さい方が多く、歯が並ぶスペースが足りずに歯並びが悪くなってしまうことがあります。
また、小さいころから洋食やファストフード中心の生活は、「しっかり噛む」機会が少なくなるため、顎の発達が十分に促されにくいです。
そのため、矯正治療をする際にも、歯を並べるスペースが足りないため、抜歯が必要になります。

矯正で抜歯が必要ない4つのケースとは

歯科矯正は抜歯をせずに実施ができることも多くあります。歯科矯正のプランを相談する際に、担当の歯科医師へ抜歯が必要かどうかも確認しましょう。

1 歯並びの乱れが軽度の場合

歯並びの乱れが、前歯の気になる一部分などの場合には、抜歯が必要ない可能性があります。
マウスピース矯正やインプラント矯正の場合には、奥歯より後ろに歯を動かすことができるため、軽度の歯並びの場合には、抜歯せずに矯正をすることもあります。

2 抜歯以外の方法でスペースを確保できる場合

矯正治療では、歯と歯の間を少し削ってスペースを作る「IPR」という方法があります。
エナメル質の部分を歯の健康に影響が出ない範囲で削る処置を行います。
0.1ミリ単位で削っていきますが、多くの歯のIPRを行うと歯を並べるスペースを確保できます。

3 すきっ歯の方

すきっ歯の方は、そのすき間の部分に歯を並べることができるため、そのまま治療が可能なケースが多いでしょう。

4 お子さんの場合

永久歯が生え揃うころまで、顎の成長は続いています。
お子さんの場合には、顎の成長を促しながら、永久歯が正しい位置に生えてくるように誘導ができます。
そのため、抜歯をしなくてもよい可能性が多くなります。

矯正で抜歯をする3つのメリット

矯正治療の際に抜歯が必要な主な理由は、歯を並べるスペースを確保するためです。矯正で抜歯をすることのメリットについてご紹介します。

1 重度の歯並びの不正にも対応ができる

重度の歯並びの不正の場合には、大幅に歯を動かさなければいけないケースが多くなります。
歯並びによっては、骨格のバランスを整える外科矯正が必要な場合もありますが、抜歯をすることで、重度の歯並びの不正にも対応がしやすくなります。

2 治療計画通りに歯が動きやすい

抜歯をすると、歯を動かすスペースが広がり、歯を動かしやすくなります
そうすると、治療計画通りに歯が動いてくれやすくなります。

3 理想のEラインに近づきやすい

Eラインとは、横顔の美しさの指標で、鼻先から顎先まで一直線に結んだ時に口元が少し内側かライン上に触れていると良いとされています。
抜歯をすると、出っ歯や受け口などで口元が出ている歯並びも奥に下げることができるため、理想のEラインに近づきやすくなります。

矯正で抜歯をする3つのデメリット

歯科矯正での抜歯は健康な歯を抜歯することが多くなります。矯正で抜歯をすることのデメリットについてご紹介します。

1 身体に負担がかかる

抜歯をしている時は麻酔をしているため、痛みが出ることはほとんどありませんが、2〜3日は痛みや腫れが出る場合があります。
ただ、痛み止めを飲んで頂くと、多くの場合、痛みが和らぎます。
痛みを軽減するために、抜歯当日は「飲酒」「激しい運動」「お風呂に入る」などの血流が良くなることを避けて安静にしましょう。

2 抜歯した所が埋まるまで時間がかかる

歯の矯正は適切な力を加えて歯を動かします。
そのため、1ヶ月間に動かせる範囲が決まっており、抜歯した部分のすき間が埋まるまである程度期間がかかります。
矯正で抜歯をするのは、前から4番目の歯のことが多いため、笑った時に目立つ部分ではないですが、一定期間抜歯した部分が埋まるまで時間がかかることを知っておきましょう。

3 追加で費用がかかることがある

矯正治療は、ほとんどが自費治療のため歯医者ごとに費用が異なります。
費用の内訳も違っており、矯正費用のすべてがパッケージになっている場合もありますが、抜歯などは別に費用がかかる場合があります。
歯医者によって費用は異なりますが、5000〜15000円程度のところが多いでしょう。

抜歯した歯を有効に活用する方法

歯科矯正で抜歯した健康な歯は歯髄再生治療に活用することができます。

虫歯が進行して、歯髄(しずい)まで達すると歯髄を抜く治療(歯の神経を抜く治療)が必要です。
また、スポーツや事故などで歯に強い外傷があると、歯髄を残すことが難しくなります。
歯髄が無くなると、栄養や酸素を供給できなくなってしまい、歯が弱くなります。

歯髄再生治療は、抜いた歯から歯髄幹細胞を採取して、培養して移植する治療です。
失った歯髄の再生を促し、栄養や酸素などを供給できることを期待します。

歯髄再生治療の3つのメリット

歯髄再生治療のメリット

歯髄再生治療を行うメリットについて3つご紹介します。

1 二次虫歯に気づきやすくなる

神経のない歯は痛みも感じなくなっています。
そうすると、二次虫歯が被せ物の中で広がっていても、気づきにくくなります。
自覚症状がなく、広がった二次虫歯を除去するためには、さらに歯を削る必要があり、歯の寿命を縮めてしまうことにつながります。

歯髄再生治療を行うことで、感覚が脳に伝わるようになり、二次虫歯が悪化することを防げます。

2 歯が長持ちしやすくなる

神経を抜いてしまうと、栄養や酸素を供給できなくなってしまいます。
歯髄再生治療で、歯髄幹細胞を移植して歯髄の再生を促し、栄養や酸素を供給できるようになり、歯髄周囲への象牙質の形成も期待できます。
そうすると、枯れ木のようになっていた歯が長持ちしやすくなります。

3 全身疾患への治療が期待されている

幹細胞の採取は、歯の他に骨髄や臍帯がありますが、採取する時の負担や出産の時にしか採取できないなどの難しさがあります。

歯髄幹細胞は、抜歯が必要になった親知らずや乳歯から採取できるため、身体の負担が少ない採取方法です。
現在は、歯髄がない歯に移植する治療が実用化されていますが、今後は心筋梗塞や白血病、アルツハイマーなどの治療への応用が期待されています。

歯髄再生治療の3つのデメリット

基本的にはメリットが大きい歯髄再生治療ですが、実施にあたってはデメリットも存在します。

1 治療できる歯医者が限られている

歯髄再生治療は特殊な技術が必要です。
国で定められている再生医療の基準を満たして、審査機関の審査を受け、国に届け出を提出している歯医者でしか提供ができません。

2 治療費用が高い

歯髄再生治療の費用は自費治療になります。
提供する歯医者によって費用は少し異なります。

・前歯   約50~70万円
・小臼歯  約60~90万円
・大臼歯  約80~100万円

大臼歯は根の本数が多いので費用が高くなります。

3 治療期間がかかる

抜歯した歯は、歯髄幹細胞を取り出して、培養をします。
培養にかかる時間は1ヶ月程度です。

その後、提携の歯医者で歯髄幹細胞を移植して6〜12ヶ月程度経過を観察します。

【関連記事】歯髄再生治療とは?メリットやデメリットを解説します

アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクとは?

抜歯した歯を歯髄再生治療で使うことができるようになりました。
また、抜歯をした歯の中から歯髄幹細胞を採取して凍結保管しておく、アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクもあります。

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 アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクのメリット

歯髄幹細胞をバンクに預けておくことで得られる主なメリットについてご紹介します。

 1 若い幹細胞を保存できる

歯髄幹細胞は、若い時の方が増殖しやすく質も良いと考えられています。
そのため、凍結保存することによって、今の歯髄幹細胞を保管しておくことができ、将来歯髄再生治療が必要になった時に、若い時の幹細胞を使うことができます。

 2 将来再生医療に使用できる可能性がある

現在は歯髄再生治療に使われている歯髄幹細胞ですが、全身の再生治療に応用できる様に研究が進んでいます。
そのため、将来の再生治療に使用できる可能性があります。

【まとめ】

矯正で歯並びを整えるためには、抜歯が必要な場合があります。
キレイな歯並びや噛み合わせにするために必要な抜歯ですが、大切な歯を抜歯することに抵抗感がある場合も少なくありません。

その抜歯した歯は、バンクすることで「歯髄再生治療」に活用できます。
抜歯した歯から採取した「歯髄幹細胞」は凍結保管されるため、未来の再生治療にも使用できる可能性が広がります。