大切な歯をいつまでも維持しつづけるためには、「予防」が大切です。
歯は失ってみてはじめて、その大切さに気づくといわれています。
いつまでも自分の歯で噛むことができるのは当たり前、と思ってしまいがちですが、そのためには日頃のケアや意識が重要となります。
そこで今回は、大切な歯を残すためにできる4つのことについてご紹介します。

1 予防歯科の基本とは?

予防歯科の基本は、毎日のセルフケアと定期的なプロフェショナルケア(歯科医院でのケア)の2点です。以下に、その内容をご紹介します。

・毎日のセルフケア

毎日のセルフケアのポイントをご紹介します。

正しいブラッシング方法

「磨いている」と「磨けている」は似ているようですが、その状態は大きく異なります。
歯磨き粉が口の中に広がると、清涼感があり磨いている気持ちになってしまいがちです。

しかし、細かい部分にプラーク(歯垢)が残っていることが多いため、歯ブラシを当てる順番を決めて毛先が当たっているか鏡を見ながら歯磨きをしましょう

また、歯の面と歯ぐきの境目を分けて歯磨きすることも大切です。
歯ぐきの境目は、歯ブラシを歯の面に対して45°位に当てて1〜2本程度ずつ細かく当てましょう。

デンタルフロスの併用

歯と歯の間はプラークが残りやすく、虫歯や歯周病になりやすい部分です。
歯ブラシだけではプラークが落とし切れないことも多いため、デンタルフロスを併用して落としましょう。

歯間ブラシの併用

歯間が大きい場合には、歯間ブラシを併用することがおすすめです。

・定期検診

定期的な歯科医院への受診は、歯を健全に保つ上で非常に大切です

定期検診の大切さ

虫歯や歯周病は自覚症状が少なく、いつの間にか進行していたということも少なくありません。
気づいた時にはかなり悪化して、歯の寿命を縮めてしまうこともあります。

定期的に検診を受けていると、自覚症状がない段階の虫歯や歯周病に気づくことができ、すぐに対処ができます。
虫歯や歯周病は初期の段階で処置ができると、歯にも負担が少なく、治療回数や治療費の負担も軽減できます。

クリーニング

毎日歯磨きをしているのに、虫歯になった経験はありませんか?
苦手な部分や磨きにくいところはプラークが残ってしまいがちです
毎日のセルフケアでは落とし切れないプラークは、歯科医院でのプロフェッショナルケアで落とします。
クリー二ングでは、普段落とし切れない部分や歯石になって歯ブラシでは落とせない部分も除去することができます。

・フッ素を取り入れる

フッ素には、「虫歯菌を抑制する働き」「歯の再石灰化を促進する働き」「歯を強くする働き」という3つの働きがありますので効果的に取り入れましょう。

歯医者でのフッ素塗布

歯医者で塗布するフッ素は濃度が高いため、3ヶ月に1度程度の塗布がおすすめです

自宅でできるフッ素入り歯磨き粉

歯磨き粉にフッ素が配合されている物は多くありますが、フッ素の濃度は商品によって異なります。フッ素濃度は高濃度であるものがおすすめですが、日本では上限が「1450ppm(1500ppm)」と定められているため、この数値を意識しましょう。

・悪習慣の対策

寝ている時の歯ぎしりは無意識で行っていることも多いため、自分で改善することが難しい悪習慣です。
しかし、そのまま放置してしまうと歯や顎に負担がかかってしまいます。
就寝時にはマウスピースを使用して歯ぎしりから歯や顎を守りましょう。

2 歯の健康を維持するための食生活

虫歯を予防するためには食生活も関係していますので、歯の健康を維持するための食生活をご紹介します。

・控えるとよい食品

糖分の多い食事やおやつを食べていると、お口の中の細菌が糖分を栄養にして歯を溶かします。
唾液には歯の再石灰化を行う働きがあり、歯を修復する機能を持ちますが、頻繁に糖分が多い食品を食べているとその働きが追い付かず虫歯になってしまいます。

糖分の多い食品は時間を決めて摂取し、基本的なことですが、食後は歯磨きをしましょう。

・歯によい食べ物

カルシウムやビタミンDを豊富に含む食品
・乳製品
・魚
・緑黄色野菜

歯のエナメル質を強化する食品
・ナッツ
・チーズなど

3 歯を残すための歯科治療の選択肢

歯を残すための歯科治療の選択肢についてご紹介します。

・歯周病治療

歯周病の治療は、進行度によっても異なります。
ただ、「口の中から歯周病菌を減らす」という考え方はどの段階にも共通しています。

歯周病菌は、磨き残しのプラークの中にひそんでいるため、口内環境を清潔に保つための「正しいブラッシング」が大切です。
歯科医院の中には、1人1人のお口の状態に合わせて、「ブラッシング指導」を行い、毎日のセルフケアに役立てるような支援を行っているところもあります。

また、プラークがついたままになると、歯石になり歯ブラシで落とすことができなくなるため、歯科医院では、歯石を除去する「スケーリング」も行ってもらえます。

歯周病検査の概要

レントゲン検査
レントゲン撮影して、顎の骨や歯周組織の状態を確認します。
歯周病の進行度合いを確認するために、レントゲン撮影をします。

歯周ポケット検査
歯周病が進行していくと、歯ぐきの深さである歯周ポケットが深くなります。
そのため、歯ぐきの深さを測定し、進行度を計測します。

動揺度検査
歯の動揺がないか測定します。

出血の有無
歯ぐきの炎症があると出血しやすくなるため、出血の有無を確認します。

歯周基本治療

歯周基本治療についてご紹介します。

プラークコントロール
歯周病の治療のためには、プラーク(歯垢)に含まれている歯周病菌を取り除くことが重要です。
そのため、基本的なことですが大切なのは毎日行う「歯磨き」です。
毎日の正しい歯磨き習慣を身につけないと、歯周病は改善しません。

歯科医院では、毎日のセルフケアをより効果的にするために、苦手な部分やプラークが残っているところを確認し、歯ブラシの当て方を指導してもらえます。
毎日の正しい歯磨き習慣でプラークを除去するよう、プラークコントロールを意識し、口の中を清潔に保ちましょう。

スケーリング
歯の表面についているプラークや歯石を専用の機械で取り除きます。

SRP
歯ぐきの深い部分についている歯石を専用の器具で取り除きます。

歯周外科治療

歯周病が進行していると、歯周基本治療だけでは改善が難しいため、歯周外科治療を行います。

フラップ手術
フラップ手術は、歯ぐきを切開して目で見える状態にして歯ぐきの深い部分の歯石やプラークを徹底的に除去する方法です。
そうすることで、歯ぐきの再付着を促します。

ただし、歯が長く見えてしまう可能性があるため、前歯などの見えやすい部分は事前に歯科医師に相談しましょう。

歯周組織再生療法
歯周病が進行すると、炎症は歯ぐきだけでなく歯を支えている顎の骨にも及びます。
そうすると、歯を支えている顎の骨は溶けてなくなっていきます。
歯周病で減ってしまった顎の骨は自然に戻ることはありません。

そこで、溶かされてしまった部分に骨再生誘導薬剤と遮蔽膜を使って歯周組織の再生を促す「GBR法」や歯根面にタンパク質の一種を塗布する「エムドゲイン法」があります。
エムドゲイン法は、歯が生えてくる時と同じような環境を作り、歯周組織の再生を促します。

・根管治療

虫歯が神経まで広がった場合や外傷などの強い力で神経が壊死してしまった場合には、歯髄(歯の神経)を抜く治療をします。
そして、歯髄があった根管の壁面を削ることで内部の細菌を徹底的に取り除き、清掃、消毒ののち、根管内の空洞部分に人工物を充填します。この処置を、根管治療といいます。

根管内は複雑な形態をしているため、難易度の高い治療となることが多いです。

根管治療は、歯を維持するうえで重要な治療ではありますが、治療の際、細菌を除去するために根管の壁面を削るため、歯根(歯の根の部分)の強度が低下し、将来的に歯が割れる・折れるリスクが高まることが懸念されます。

歯髄を再生させる「歯髄再生治療」

歯髄(しずい)再生治療とは、歯髄を失った歯に「歯髄幹細胞」を移植し、歯の血管・神経機能の再生、根管治療で削られた歯の硬組織(象牙質)の再形成を促す治療です。
歯髄の機能を失い、根管治療で根管内を削られた歯は、通常の歯よりも強度が低下し、割れる・折れるといったリスクが高まっています。歯髄再生治療により歯の神経・血管を再生させ、さらに削られた根管部分の再形成を促すことで、歯の寿命を延ばすことにつながります。

抜歯する親知らずや乳歯、矯正で抜く歯などから歯髄幹細胞を取り出し、専用の施設で培養します。
(※歯髄再生治療を受ける歯科医院か提携歯科医院での抜歯が必要です。)

十分に培養できて、検査により安全性が確認できた歯髄幹細胞を、歯髄が失われた歯の根管内に移植します。
これにより、移植された細胞が根管内に留まり、神経の伸長や血管の新生が行われ、歯髄の再生が促進されます。

歯髄は、周囲の硬組織(象牙質)を修復する機能を持つため、治療で削られた根管の硬組織再形成も期待されます。

楽しくわかる歯髄と歯髄再生治療

歯髄とは
歯髄には神経や血管などが含まれており、歯に栄養や酸素を送る役割や、周囲の硬組織(象牙質)を修復する働きがあります。
また、歯の神経には痛みなどの知覚を伝え、早期に歯の異常を知らせる大切な働きがあります。
そのため、歯髄を失ってしまうと、歯に酸素や栄養が供給できなくなり、周囲の硬組織修復能力も失われるため、歯がもろくなってしまいます。

歯髄を失うデメリット
歯髄を失うと以下のようなデメリットがあります。

・痛みを伴う症状に気づきにくい
神経を失っているため、二次虫歯ができていても気づきにくく、症状が進行しやすいです。
また、歯周病が進行していても症状が分かるまでに時間がかかってしまうため、注意が必要です。
定期的に検診を受けることで、自分では気づかない不具合などに対処することができます。

・歯が割れやすい
歯の神経である歯髄を取り除く治療(根管治療)では、細菌除去のために歯の内部の硬組織(象牙質)も大きく削られ、歯根の強度が低下します。
また、歯髄喪失により栄養や酸素も供給できなくなるため、歯が弱く、割れやすい状態となります。

・歯の見た目が悪くなってしまう
歯の神経を失うと、歯の色が変色する可能性があります。
歯の神経には、歯の内部の色を維持する機能もあるため、神経内部の血液の循環が無くなると、歯が変色してしまうことがあります。

4 アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクとは?

将来の再生医療に備えるために、「歯髄幹細胞」を保管しておくのがアエラスバイオ歯髄幹細胞バンクです。

提携歯科医院で抜歯をした親知らずや乳歯、矯正で抜く歯からは、身体の組織の再生・修復機能を持つ歯髄幹細胞が採取できます。しかし、数多くの歯髄幹細胞が採取できるわけではありません。

そのため、専用施設のクリーンルーム内で歯髄幹細胞を培養して一定数まで増やします。
そして、検査をクリアした歯髄幹細胞を-150°以下の液体窒素で冷凍保管します。

この歯髄幹細胞を保管するサービスが、「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」です。

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【まとめ】

大切な歯をいつまでも維持するためには、お口の中のプラークコントロールが大切です。
そのためには、毎日の丁寧なセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアを行いましょう。
毎日のセルフケアだけでは落とせないプラークは歯科医院で落とすことができます。
また、自覚症状がない不具合も対処することができますので、早期発見・早期治療が可能です。
いつまでもご自分の歯で食事ができるよう、予防をしましょう。
もし、虫歯が進行した場合には、根管治療、歯髄再生治療などの選択肢もありますので、できるだけ歯を残すために必要なものを選択しましょう。