歯周病の痛みの原因には歯ではなく、歯茎が関係しています。歯周病を放置すると症状が悪化し、重篤な健康被害につながるおそれがあるため注意が必要です。本記事では、歯周病の痛みの原因や治療法を解説します。現在、歯周病の痛みでお悩みの方や、痛みを改善したい方は参考にしてみてください。
歯周病の痛みの原因
歯周病の痛みの原因は、歯茎が退縮し、歯茎の下にある歯根が露出して起こる知覚過敏に関係があります。
通常、歯茎から上に出た歯冠部分はエナメル質で覆われており、神経はありません。
しかし、歯茎が退縮するなどして象牙質が歯茎の上に露出すると、冷たい水や風、歯ブラシなどで刺激が加わる際に痛みが生じる場合があります。
歯周病で痛みが出る場合の応急処置
歯周病で痛みが出るとき、すぐに歯医者に行けない場合もあるでしょう。
そのようなケースでは以下の応急処置がおすすめです。
- 痛み止めを服用する
- 患部を冷やす
痛みで夜眠れなかったり、食事が進まなかったりする場合はぜひ試してみてください。
ただし、これらはあくまでも応急処置になりますので、たとえ痛みが落ち着いたとしても、一度歯医者を受診してしっかり診てもらうようにしましょう。
痛み止めを服用する
歯周病の痛みは、ドラッグストアや薬局などで販売されている痛み止めの薬を使用することで抑制できます。
食事や睡眠の際、支障が出ている場合は、無理せずこれらに頼りましょう。
患部を冷やす
冷却シートや保冷剤をタオルなどで包んだものを、痛みが生じている箇所の外側から当てると、少し痛みが和らぎます。
氷を口に含むなど、患部を直接冷やす行為は症状が悪化するおそれがあるため控えてください。
歯周病の症状
歯周病の症状は、進行具合に応じて主に以下の4つにわかれます。
- 歯肉炎
- 軽度歯周炎
- 中度歯周炎
- 重度歯周炎
症状が悪化するにつれて治療範囲が拡大し、場合によっては外科手術や抜歯が必要になりますので早期発見・早期治療を心がけましょう。
歯肉炎
歯肉炎は、歯茎が少し腫れ、歯垢が溜まって少量の出血が生じている状態です。歯周ポケットは2〜3mm程度で、歯垢・歯石の除去を行うことで治療できます。
軽度歯周炎
軽度歯周炎は、歯肉炎が進行し、細菌が歯周組織に及んでいる状態です。歯根膜・歯槽骨の破壊が始まる段階であり、歯周ポケットは3〜5mm程度になります。歯垢・歯石の除去を行うことで治療が可能です。
中度歯周炎
中度歯周炎は、症状が進行し、炎症範囲が広がっている状態です。歯槽骨が半分程度破壊されているため、歯がぐらつき始めます。歯周ポケットは、4〜7mm程度です。
治療には、歯や歯根の周囲に付着した歯垢・歯石を除去する必要があり、場合によっては歯周外科手術を要するケースもあるでしょう。
重度歯周炎
重度歯周炎は、歯槽骨が半分以上溶け、歯周組織の破壊が拡大している状態です。歯周ポケットは7mm以上になり、歯がぐらついて自然に抜け落ちるおそれもあります。
歯垢・歯石の除去や歯周外科手術を行う必要があり、完治しない場合、抜歯を要する場合もあるでしょう。
歯周病の思わぬリスク
歯周病は、口内のみならず、子宮内膜症にも関係する疾患です。名古屋大学大学院の研究によると、子宮内膜症の原因が、口腔内に常在する細菌「フソバクテリウム」に関係することが示されました。
研究グループによると、子宮内膜症の患者の子宮組織を調べたところ、約6割の患者の組織にフソバクテリウムが存在していることがわかっています。
歯周病菌であるフソバクテリウムを放置すると子宮にも影響し、不妊症などの原因になります。そうならないためには、症状が悪化する前に治療を受けることが必要です。
引用:日本歯科新聞「子宮内膜症に歯周病菌が関与/名大らの研究で判明」
歯周病の治療方法
歯周病の治療の流れは、主に以下の4つの段階にわかれます。
- 1.歯磨きと歯石除去
- 2.噛み合わせや修復物の確認
- 3.歯周外科処置
- 4.メンテナンス
治療に時間を要するため、スケジュールを立てて治療に臨む必要があります。また、治療費が高額であるため、
1.歯磨きと歯石除去
歯周病にかかった場合は精密検査を行い、歯茎・歯槽骨の状態や歯周病を悪化させる要因がないか調査しなければなりません。
そして、歯磨きの練習をするなどして、正しい歯磨きの仕方を学ぶことも必要です。
正しい方法で歯磨きを行うことで、歯茎の炎症が減少します。炎症が治まると、歯石が確認しやすくなり、歯石除去も行いやすくなるでしょう。
そして歯石を除去すると、内部の細菌が減少して歯茎が引き締まり、状態が良くなります。
2.噛み合わせや修復物の確認
歯垢が付着しにくく、歯垢を取りやすい口内環境を作るには、噛み合わせや修復物の状態を確認する必要があります。修復物の適合が悪かったり、噛み合わせに問題があったりすると、歯垢や歯石が溜まりやすくなるためです。
これらの問題を改善し、口内環境を整えることで、症状の安定が期待できます。
3.歯周外科処置
上記の処置を行っても、歯周ポケットが残っている場合、歯周外科処置が必要です。歯周外科処置を行うことで歯周ポケットが減ると、歯槽骨の状態が改善されて清掃しやすい環境になります。
また、歯周組織再生療法を行うことでも、歯槽骨や歯茎を増やすことが可能です。
4.メンテナンス
歯周病の治療後、歯茎の炎症が落ち着いていても、歯槽骨による支えが不十分の場合があります。その場合は修復物による歯の固定が必要です。
固定後は定期的に歯医者に行き、メンテナンスをしてもらいましょう。
また、歯磨きを丁寧に行う、フロスを使用するなど日頃のセルフケアも大切です。
歯周病の予防方法
誰でも簡単に実践できる歯周病の予防法は、主に以下のとおりです。
- セルフケアを徹底する
- 全身の健康管理を徹底する
- 定期健診を受ける
セルフケアを徹底する
歯周病を予防するためには、日々の歯磨きが必須です。柔らかめの歯ブラシを使用し、丁寧に磨き上げましょう。
とはいえ、歯に付着した歯垢は歯磨きだけでは除去することが難しいため、デンタルフロスや歯間ブラシなどを活用することも大切です。日々の積み重ねが、健康的な口内環境を作ります。
全身の健康管理を徹底する
たばこは歯周病を悪化させる原因となるだけでなく治療効果が上がりにくくなるといわれているため、控えるようにしましょう。
糖尿病などの全身疾患も歯周病を進行させるとされています。
また、高血圧などの薬を服用すると、副作用で歯茎が腫れることもあるでしょう。
こういった理由から、口内環境を健康に保つためには日々の生活習慣にくわえ、全身の健康管理を徹底することが重要といえます。
定期検診を受ける
歯医者で定期検診を受けておけば、万が一虫歯や歯周病にかかっていたとしても初期段階で発見しやすくなり早期治療につながります。
頻度としては、3〜6ヶ月に1回を目安に定期的に通うようにしましょう。
歯周病チェックリスト
自身が歯周病かどうかチェックしたい場合、以下のリストを確認してください。以下に一つでも当てはまる場合は、歯周病の可能性があります。
- 歯が伸びた感覚がある
- 口臭が気になる
- 固いものが食べにくい
- 歯がぐらつく
- 口の中がねばつく
- 歯茎がむず痒い感覚がある
- 歯茎が腫れている
- 歯磨きをすると血が出る
該当する人は、速やかに歯医者を受診するようにしてください。
まとめ
歯周病の痛みの原因は、歯茎の退縮が関係しています。歯茎の下に存在する歯根が露出し、知覚過敏になっているのかもしれません。
痛む場合は速やかに歯医者を受診するのが一番ですが、それまで痛みが耐えられない場合は、市販の痛み止めを飲む、患部を冷やすなどの応急処置を行ってください。
歯周病を放置すると症状が進行し、歯周外科手術や抜歯などが必要になる場合があります。
また、歯周病予防のためには、日々のセルフケアの徹底や、歯医者で定期的に検診を受けることが重要です。
日々のセルフケアとプロによる定期的なケアを徹底し、健康的な口内環境を維持していきましょう。