親知らずが斜めに生えている、親知らず付近の歯茎の腫れがある、抜歯を検討した方がよいといわれて迷っている方はいませんか?
親知らずはトラブルになることも多く、抜歯した方がよいといわれることもあります。
不要な存在として扱われがちな親知らずですが、将来の自分の健康のために有効活用できる方法があります。
そこで今回は、親知らずはなぜ生えるのか、また親知らずを活用する方法についてご紹介します。
親知らずとは?
親知らずは、永久歯の中で最後に生えてくる歯で、前から8番目の歯です。
7番目までの永久歯は、15歳くらいまでに生え変わりますが、親知らずは18〜20歳くらいで生えてきます。
ただし、親知らずは上下左右4本全て生え揃うわけではありません。
顎の骨のスペースが足りずに、斜めに生えたり、真横に生えてしまうことがあります。
また、元々親知らずがないケースもあります。
参考:親知らず – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020|日本歯科医師会
親知らずが生えることで起きること
親知らずが生えてくると、虫歯になっていなくても痛みが出る場合があります。
歯が生えてくるときは、歯ぐきを押して萌出するため、その際に痛みを伴うことがあります。
親知らずは真っすぐ生えてくることが少なく、斜めや真横に生えている場合歯を押していることが考えられます。
特に、斜めに生えている場合には、奥なので歯ぐきの境目に汚れが残りやすく、腫れて痛みが出ている可能性があります。
この状態を「智歯周囲炎」といい、歯ぐきに細菌が感染して痛みが出ている状態です。
症状が強くなると、頬が腫れる、口が開きにくいなどの症状が出る場合があります。
親知らずは、強い痛みが出ている時にはすぐに抜歯ができないため、抗生剤などで炎症を抑えてから治療が検討されます。
親知らずを抜歯しなくてもよいケース
真っすぐ生えていて上下できちんと噛み合っている親知らずは、歯の機能があるため、抜歯の必要がない場合があります。
特に問題を生じていない親知らずは抜歯をせずに、将来「歯髄再生治療」や「移植」ができる可能性があるため、抜歯をせずにおきます。
ただし、一番奥の歯のため、歯ブラシが届きにくい部分です。
汚れが落としにくく、虫歯や歯周病のリスクの高い場所になるため、毎日のセルフケアを十分に行いましょう。
歯ブラシだけでは、歯と歯の汚れは落としにくいため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用して細かい汚れを落としましょう。
また、ご自分で落とせない部分は、定期的に検診を受けてクリーニングで落とすことが大切です。
親知らずの状態だけでなく、ほかの歯も確認することで、口内環境を整えることができます。
抜歯した方がよい親知らず
きちんと噛み合っておらず、斜めに生えているなどして、汚れが残りやすいと歯ぐきの腫れの原因になります。
何度も歯ぐきの腫れを繰り返している場合や虫歯になっている場合には、歯の機能も果たしていないため、抜歯が検討されます。
親知らずは現代では不要になった
大昔の話になりますが、その時代の食事は、動物の肉や木のみなど歯や顎を使う食べ物が中心でした。
しっかりと噛む必要があるため、顎も発達しており、親知らずもきちんと生えていました。
現代の食事は、ファストフードなども増えてやわらかい食事が増えています。
しっかり噛むことで、顎の成長が促されますが、やわらかい食事ばかりでは顎の発達が十分ではありません。
そのため、親知らずが生えるスペースが十分では無く、きちんと生えてこないケースが多くなりました。
きちんと生えてこない親知らずは、歯ぐきが腫れたり、虫歯になったりすることが多いため、抜歯が検討されることが多くなりました。
親知らずと乳歯は再生医療に活用できる
歯の中には、「歯髄(しずい)」といわれる神経や血管が通っている組織があります。
虫歯が広がって歯髄まで進行すると、歯髄を抜く治療(歯の神経を抜く治療)が必要です。
しかし、歯髄を失った歯は、栄養や酸素を供給できないため、もろくなってしまいます。
歯髄を失った歯の歯髄を再生させる治療に「親知らず」や「乳歯」などの不用歯を活用することができます。
歯の内部の「歯髄幹細胞」を採取、培養し、歯髄を失った歯に移植して、歯髄を再生させる歯髄再生治療の適用ができるようになりました。
歯髄幹細胞の特徴
幹細胞は、さまざまな組織の細胞に分化できる能力と同じ細胞を増やすことができる能力があります。
そのため、さまざまな細胞を生み出す能力があります。
幹細胞は、歯髄だけでなく、臍帯血、骨髄、脂肪組織などの多くの場所に存在します。
その中でも、歯の内部にある歯髄幹細胞は、固いエナメル質に守られているため、外部からの刺激が受けにくく、細胞が傷つきにくいと考えられています。
また、ほかの幹細胞と比較して、血管や神経に分化しやすいことが分かっています。
アエラスバイオの歯髄幹細胞バンク
永久歯の生え変わりの乳歯や抜歯が必要だった親知らずは、今までほとんど活用されることがありませんでした。
しかし、「バンク保管」という選択肢を選ぶことができるようになりました。
歯の内部には、神経や血管を含む「歯髄」があり、この歯髄の中には、組織を再生させる「歯髄幹細胞」があります。
この歯髄幹細胞を採取して、保管しておき、未来の自分や家族の再生治療が必要になった際に利用できるように保管しておくのが「バンク保管」です。
対象になる歯とは?
基本的に、バンクに保管できる歯は虫歯や感染していない健康な歯になります。
具体的には以下のような歯がバンクに保管できます。
- 永久歯に生え変わる乳歯
- 抜歯が必要になった親知らず
- 矯正のスペースが必要な時に抜歯する歯
アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクに預けるためには?
バンクの契約をした後、アエラバイオと提携している歯科クリニックで抜歯をするだけで歯髄幹細胞を保管することができます。
入院など、特別なことは必要ありません。
通常の抜歯と同様に、当日は激しい運動を避け、腫れや出血がしやすくなるため、飲酒を控えていただく必要はありますが、翌日から日常生活を送ることが可能です。
バンク保管の流れ
バンク保管について申込から実施までは以下のような流れで実施します。
STEP1 申し込みと契約
事前にバンクの申し込みをし、契約をします。
STEP2 抜歯
抜歯の予約をして、アエラバイオと提携している歯科クリニックで抜歯をします。
抜いた歯は、CPC(歯髄細胞培養センター)に送られます。
STEP3 歯髄細胞の採取及び培養
歯髄組織の採取・歯髄幹細胞、残存質、象牙質の組織を凍結します。
STEP4 保管開始
保管が開始されます。
歯髄再生治療の4つのメリット
現在、アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクで保管した歯髄幹細胞だけが、歯髄再生治療に利用することができます。
その 歯髄再生治療には、多くのメリットがありますので、ご紹介します。
1 歯を長持ちさせることができる
歯髄を抜いた歯は、栄養や酸素を供給することができず、枯れ木のようになってもろくなります。
歯髄再生治療は、歯髄を再生させることで歯に栄養や酸素を届けてくれるため、歯に栄養が行き渡ることや、歯髄周囲への硬組織(象牙質)形成、痛みなど知覚機能の再開が期待でき、割れにくく、歯を長持ちさせることにつながります。
2 変色した歯を天然歯のように改善する見込みがある
神経が死んだ歯の変色は、歯に栄養が送られないことが原因の一つです。
歯の内部からブリーチをして歯を白くした後、歯髄再生治療を行うことで白い歯を取り戻せます。
また、歯の栄養供給が再開し、変色を防ぐことも期待できます。
3 二次虫歯を防ぐ
歯髄を再生することで、神経が感覚を伝えることができます。
神経がない状態では、二次虫歯になっても痛みが出ないため、どんどん進行してしまいます。
神経を取り戻すことで、二次虫歯も発見しやすくなります。
4 全身疾患の治療にも応用できる場合がある
歯髄幹細胞は、多くの治療への応用が期待されており、歯への治療だけでなく、白血病、アルツハイマー、脳梗塞、心筋梗塞などの治療への応用も期待されています。
歯髄再生治療の3つのデメリット
多くのメリットがありますが、次のようなデメリットもあるため、注意しましょう。
1 自費治療のため、費用が高い
歯髄再生治療は、自費治療で、歯髄を保管するためにも費用がかかるので、治療費が高くなります。
2 治療期間が長い傾向がある
歯髄幹細胞を移植した後も経過を見る必要があります。
そのため、短期間で治療を受けたい場合には難しい治療です。
3 歯髄再生治療に対応しているクリニックが少ない
歯髄再生治療は新しい治療のため、まだ対応しているクリニックが少ないのが現状です。
そのため、対応しているクリニックが近くに無い場合には、遠方までいく場合もあります。
ほかの幹細胞との比較
歯髄細胞の他にも、再生医療に使用される幹細胞には臍帯血や骨髄があります。
それぞれの特徴について以下の表にまとめました。
歯髄細胞 | 臍帯血 | 骨髄 | |
---|---|---|---|
身体の負担 | なし | なし | 全身麻酔が必要のため負担が大きい |
細胞増殖 | きわめて高い(多くの治療が可能) | 研究段階 | 高い |
採取チャンス | 乳歯の生え変わり治療が必要な抜歯 | 出産時 | 骨髄移植の時 |
主な治療 | 血管障害・脳梗塞歯の治療 | 小児脳性マヒ血液のガン | 白血病など |
今後 | 世界中で歯髄細胞バンクが普及 | 今後の拡大が期待されている | 他人の場合には、拒否反応がある可能性 |
【まとめ】
親知らずは、生え方に支障がなければ、普通の歯と同じで抜く必要はありません。
抜いたほうが良い場合でも、 親知らずや乳歯は、バンクすることで歯髄再生治療に活用ができます。
歯髄が再生すると、歯に栄養や酸素を送ることができるため、歯の寿命を延ばすことにつながります。
活用する方法のない親知らずの歯髄を、歯髄細胞バンクに保存しておくと、必要になった時にご自分や将来的には家族の方の歯の歯髄再生治療が可能です。
大切な歯を守るために、親知らずや矯正で抜歯が必要な抜歯の歯髄細胞の保存にはメリットが多くあります。
親知らずを抜歯する際には歯の組織バンクや歯髄幹細胞の保管についても是非ご検討ください。