親知らずは、きちんと生えている場合には、積極的に抜歯をする必要はありませんが、痛みが起きている時には対策を行う必要があります。
親知らずが痛む原因もいくつかありますので、対策と合わせてご紹介します。

親知らずの基礎知識

親知らずの基礎知識についてご紹介します。

親知らずが生えてくる時期

親知らず以外の永久歯は、一般的に15歳前後で生え揃います。
(ただし、永久歯が生え揃うタイミングは個人差があります。)

一方、親知らずが生えてくる時期は10代後半〜20代前半が多く、ほかの永久歯と比較して遅いという特徴があります。

そのため、生えるスペースが足りずに斜めに生えたり、真横に生えてしまい、歯ぐきの上に出てこないケースもあります。

親知らずの生え方

親知らずの生え方は、大きく以下の3つに分けられます。親知らずが生えてくる位置や角度によって、歯ぐきの炎症などのトラブルが発生しやすくなる場合があります。

①真っすぐ生えるケース
②部分的に歯が見えているケース
③歯ぐきの中で真横に生えているケース

親知らずの種類と特徴

親知らずの生え方の種類とそれぞれの特徴をご紹介します。

しっかり上下で噛み合っている(まっすぐに生えている)

親知らず以外の歯と同様に真っすぐ生えて、上下の歯でしっかり噛み合っているケースは、歯としての役割を果たしているため、ほかの永久歯と同様に機能します。

ほかの歯に負担をかける要素がなく、親知らず自体にもトラブルがない場合には、大切な歯として維持しましょう。

ただし、親知らずは前から8番目の歯で口の奥に存在するため、歯ブラシが当たりにくくなります。
虫歯や歯周病リスクが高くなるため、丁寧にブラッシングするようにしましょう。
また、虫歯や歯周病は自覚症状が少ないため、定期的に歯科検診を受けることをおすすめします。

部分的に生えている

親知らずが斜めに生えている場合などは、歯の一部が歯茎から出て、部分的に顔を出していることがあります。
このように部分的に生えている親知らずは、手前の歯との間に汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

また、虫歯が進行して手前の歯にも影響する場合もあるため、注意が必要です。
親知らずが腫れやトラブルの原因になっている場合には、抜歯が検討されます。

完全に歯ぐきに埋まっている

歯が真横に埋まっていたり、親知らずがあるのに生えてこないケースです。
レントゲンを撮影すると、歯の存在を確認することができますが、歯ぐきの中に埋まっているため、見た目には分からない状態です。

症状がなければ、無理に抜歯をする必要はありませんが、真横に生えている場合、手前の歯を押して痛みが出る場合があります。
また、矯正治療をする際に、真横に生えている親知らずが歯並びを悪くする可能性がありますので、その場合には、抜歯が検討されます。

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親知らずによる痛みの原因

親知らずによる痛みにもいくつかの原因がありますので、ご紹介します。

・智歯性歯周炎

親知らずが斜めに生えていると、手前の歯との間にすき間ができてしまいます。
そうすると、その部分に汚れが入りこみやすく、歯ブラシが当たりにくくなるため、歯ぐきの炎症の原因になりやすいです。

抵抗力が落ちた時などに腫れやすく、一時的に痛みが出ても落ち着くことが多いですが、智歯周囲炎が悪化すると頬や歯ぐきの腫れ、口を開けると痛い、などの症状が出る場合もあります。

親知らずの状態に応じて抜歯が検討されますが、痛みが出ている時に抜歯をしようとすると、麻酔が効きにくい場合があるため、抗生物質などを服用して、落ち着いてから治療をすることが多くなります。

・隣接する歯を圧迫して痛みが出る

親知らずが生えるスペースが足りない時に起きやすいですが、隣接する歯を圧迫して痛みが出ることもあります。

・生えてくる時の痛み

歯が生えてくる時は、多くの場合歯ぐきが盛り上がって生えてきますが、その際に歯ぐきを噛むなどして痛みが出ることがあります。
親知らずが真っすぐ生えてきている場合には、きちんと生えることで痛みも落ち着いてきます

しかし、斜めに生えている場合には、歯ぐきが盛り上がった状態が続くことが多いため、改善に時間がかかることがあります

歯性感染症

親知らずが虫歯や歯周病に感染して悪化すると、親知らずを支えている周りの組織にも悪影響を及ぼし、炎症を引き起こすことがあります。
炎症により顎が腫れたり、歯周病菌が血液を介して他の臓器にも悪影響を及ぼす場合があります。

歯性感染症は、親知らず以外の歯が原因となることもありますが、親知らずが原因になることが多いため、注意が必要です。

自宅でできる応急処置

痛みや違和感が出た場合には、歯医者に相談することが大切ですが、通院するまでにできる応急処置をご紹介します。

・痛みの緩和方法

痛みを和らげるための応急処置には以下のような方法があります。

鎮静剤の服用

親知らずの炎症が強く、すぐに歯医者に通院ができない場合には、市販の鎮痛剤を服用しましょう。

ただし、痛み止めを服用して落ち着いたとしても、親知らずがトラブルになっている可能性が高いため、早めに歯医者に通院をしましょう。

冷湿布の使用

親知らずの周りに炎症が起きている場合には、その周辺を冷やすことで一時的に痛みを緩和できる場合があります。
そのため、冷湿布や冷却シート、冷えタオルなどを使って頬から冷やすようにしましょう。

この時、直接患部を冷やすと刺激が強すぎる可能性があるため、必ず頬から冷やしましょう。

・お口の中を清潔にする

歯ぐきの境目などに汚れが入り込むことで、痛みが生じている可能性があります。
そのため、丁寧に歯ブラシを当てて細かい汚れを落としましょう。

歯磨きのポイント

親知らず周辺は歯ブラシが当たりにくいため、鏡を見て歯ブラシの毛先が当たっているか確認して汚れを落としましょう。
また、斜めに生えている場合など毛先が当たりにくい場合は、毛束が1つになっている「タフトブラシ」だとピンポイントに当たりやすくなります

デンタルフロス

歯と歯の間の汚れは、歯ブラシだけでは十分に落とし切れないことが多いです。
そのため、デンタルフロスを通して汚れを落としましょう
歯の面は手前と奥があります、それぞれの面に沿わせて汚れを落とすようにしましょう。

歯間ブラシ

歯と歯のすき間が大きい場合には、デンタルフロスより歯間ブラシがよい場合もあります。
その場合には歯間ブラシを活用しましょう。
ただし、歯間ブラシは、歯と歯の間の大きさによっては歯ぐきに負担がかかってしまうことがあります。
歯間ブラシのサイズ選びに迷ったら、歯医者で相談してみましょう。

うがい薬を使用する

殺菌効果のあるうがい薬は炎症を落ち着かせる効果が見込めるものもあります。
汚れが残って炎症が起きている場合は有効です。
ただし、清涼感があるタイプのうがい薬は、痛みがある時は刺激になってしまうことがあるため注意しましょう。

歯医者での治療法

親知らずの痛みが出ている時の歯医者での治療法をご紹介します。

・親知らずの位置や状態の確認

親知らずの内部の状態も把握するために、レントゲン撮影やCT撮影をします。

・抗生物質の投与

炎症が強い場合はその周囲が敏感になっているため、治療により強い痛みが出ることがあります。
そのため、抗生物質を服用していただき、炎症を落ち着かせてから治療を行うことがあります。

・親知らずの抜歯

歯ぐきの腫れや痛みを繰り返している場合で、上下でしっかり噛み合っていない親知らずは、抜歯が検討されます。

親知らずの抜歯が適応になった時にできること

抜歯する親知らずの中には、「生きた歯の神経の細胞」が存在します。
この細胞は、「歯髄幹細胞」と呼ばれ、私達の身体の血管や神経組織を再生させる特殊な能力を有しています。

この働きを利用し、国内外では「歯髄幹細胞」を用いてアルツハイマーや脊髄損傷、脳梗塞などの神経系の疾患を治療するための研究が行われているほか、2020年には、歯髄幹細胞を用いて歯の神経・血管を再生させる「歯髄再生治療」が、日本で初めて実用化されました。

歯髄再生治療では、歯髄幹細胞を歯の内部に移植し、栄養や血液の供給再開や、治療で削られた硬組織(象牙質)の再形成を促します

抜歯した親知らずに含まれる歯髄幹細胞は、将来の再生医療に備えて冷凍保管しておくことが可能です。

アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク

親知らずや乳歯、矯正で抜く歯などから歯髄幹細胞を採取・培養し、半永久的に凍結保管するサービスが「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」です。

保管した細胞は、すでに実用化されている「歯髄再生治療」に使用できるほか、現在研究が進められている血管・神経系の疾患治療への活用も期待されています。

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【まとめ】

親知らずには様々な生え方のパターンが存在し、生える場所や向きなどにより、痛みなどのトラブルが発生する場合があります。
親知らずの状態を把握して、腫れや痛みが出た時には歯医者に相談しましょう。
また、抜歯が必要な親知らずを、将来の再生治療に活用することもできる時代です。
抜歯のご予定がある場合は、ぜひ「細胞の冷凍保管」という選択肢もご検討ください。

※細胞保管サービスが気になる方は、下記の問い合わせフォームよりご相談ください。

<アエラスバイオお問い合わせフォーム>