親知らずは、腫れたり虫歯になりやすかったりして、トラブルになりやすい歯です。
抜歯しなくても問題ないこともありますが、虫歯や腫れの原因になった場合には、抜歯が検討されます。
今までは、抜歯した親知らずは捨てられることが多かったのですが、再生治療に使うことができるようになってきました。
そこで今回は、親知らずを抜歯した時に捨てない方がいい理由について詳しくご紹介します

親知らずとは?

親知らずは、前から数えて8番目の歯で、永久歯で一番最後に生えてきます。
7番目までの永久歯は、15歳くらいまでに生え変わりますが、親知らずは18〜24歳程度に生えることが多い歯です。
また、全ての方に生えてくるわけではなく、生えて来ない場合もあります。
上下左右の4本全て生えてこないケースもありますし、1本だけ生えてこないケースもあり、様々です。

日本人の顎は大きくないため、親知らずが生えてくるスペースが足りないケースも多くなります。
そのため、斜めに生えてしまったり、真横になって生えてこない場合もあります。

親知らずの痛みの原因とは

親知らずの痛みは、親知らずが生えることによって生じる歯周トラブルが原因になっていることがほとんどです。主な原因としては、次のようなことが考えられます。

智歯周囲炎

斜めに生えると、手前の歯との間にすき間ができてしまい、その部分に汚れが残りやすく、腫れや痛みを伴いやすい特徴があります。
この、親知らずの汚れが原因で痛みを引き起こす状態を、智歯周囲炎といいます。

親知らずの虫歯

親知らずは一番奥に生えている歯のため、歯ブラシが届きにくく、虫歯のリスクの高い歯です。
汚れの中には、虫歯菌がひそんでおり、糖分をエサに酸を発生させます。
唾液の働きで、歯を修復する働きもありますが、長い間歯垢が残っている状態や糖分が頻繁にある状態が続くと、再石灰化が追い付かず、虫歯が発生します
その虫歯が進行すると冷たい物がしみたり、熱い物がしみるようになります。

親知らずが生えてきて、歯ぐきに当たってしまう

噛み合わせになる親知らずが違うタイミングで生えてくる場合には、生えてきた親知らずが歯ぐきを噛んでしまうことがあります。
そうすると、傷がついた歯ぐきが炎症を引き起こして、痛みが出る場合があります。

親知らずが歯を押してしまう

親知らずは、真横に生えてしまうこともあります。
手前には奥歯があるため、押された歯に痛みが出る場合があります。

親知らずの3つの生え方

親知らずの生え方は様々ですが、大きく分けると3つのパターンに分類されます。

1.真っすぐ生えているタイプ

親知らずがきちんと生えており、真っすぐ生えているタイプです。
上下きちんと真っすぐ生えていると、噛み合わせることができるため、歯としての役割を果たすことができます。

2.少しだけ生えているタイプ

生えるスペースが足りない場合は、半分だけ生えて、残りは歯ぐきの中に埋まっている場合があります。
この場合には、歯ぐきと歯の境目に汚れが残りやすくなってしまいます。
智歯周囲炎のリスクが高いのもこのタイプです。
きちんと生えていないため、きちんと噛み合わせていないことが多くなります。
また、矯正治療をする際には、歯並びに悪影響を与えてしまう可能性があるため、抜歯の対象になることが多くなります。

3.完全に埋まっているタイプ

歯ぐきに完全に埋まっているタイプの親知らずは、生えてこようとして、歯を押してしまうことがあります。
そのため腫れや炎症を引き起こしやすくなります。

抜かなくてもよい親知らず

親知らずは必ず抜歯しなくてはいけない訳ではありません。
親知らずは、次のような場合に抜かなくてもよいとされています。

真っすぐ生えている親知らず

真っすぐ生えており、きちんと上下噛み合っている場合には抜歯の必要がありません。
また、抜かない条件として、腫れや虫歯がないこともあげられます。
特にトラブルになっていない親知らずは、将来歯髄再生治療に使うことができる可能性もあるため、すぐに抜歯をする必要はありません。
ただし、歯髄再生治療をする場合には、個人差によるところは大きいですが、一般的には年齢が若い方が歯髄幹細胞が増殖しやすい、質が良いなど条件が良くなります。
歯髄幹細胞は冷凍保存をすることもできるため、その場合には、早めに保存しておく選択肢もあります。

完全に埋まっている親知らず

完全に埋まっている親知らずでトラブルがない場合には、抜歯の必要がありません。
ただし、手前の歯を押して歯並びが悪くなる、炎症をおこして痛みが出るなどの症状が出た場合には、抜歯を検討する場合もあります。

抜いた方がよい親知らず

口内環境に悪影響が出る場合には抜歯をおすすめします。
具体的には以下のようなケースがあります。

虫歯になっている

親知らずは一番奥にあるため、歯磨きがしにくく、虫歯のリスクが高い歯です。
虫歯の治療になった場合には、器具を入れたり、型取りが大変な治療になります。
また、1度治療をしても、歯ブラシが届きにくいため、二次虫歯の可能性も高い歯です。
そのため、虫歯になってしまった場合には、治療のしにくさや二次虫歯の可能性などから抜歯が検討されます。

噛み合わせが悪い

親知らずは全て生えてくるわけではありません。
上下でどちらかだけ生えていると、噛み合わず、少しずつ伸びてしまう場合があります。
また、一部だけ強く当たってしまうなど、噛み合わせに悪影響を及ぼすことが考えられます。
その場合、噛み合わせが悪くなってしまうため、抜歯が検討されます。

矯正をする予定がある

矯正治療をする場合には、斜めに生えている場合には、手前の歯を押してしまう可能性があるため、治療計画通りに進まない場合があります。
せっかく矯正治療をして、歯並びが整っても、歯を押して後戻りをする可能性があります。
その場合には、抜歯が検討されます。

親知らずを活用する歯髄再生治療とは

親知らずを活用する歯髄再生治療

歯髄(しずい)とは、歯の神経のことをいいます。
歯の神経には、歯に栄養や酸素を送ったり、歯に痛みなどの感覚を伝える役割があります。
この歯髄が死んでしまったり、治療を抜いてしまうと、栄養や酸素を供給することができずに歯がもろくなってしまいます。

神経を抜いた歯は、割れたり欠けたりする可能性が高く、歯の寿命を縮めてしまうことにつながります。

そこで有効なのが「歯髄再生治療」です。
抜歯が必要な親知らずや乳歯などから「歯髄幹細胞」を取り出し、歯髄を抜かなければいけない歯に対して移植することで、歯髄の再生を促します。

歯髄が再生すると、栄養や酸素を供給できるようになるなどのメリットにより、歯の寿命を延ばすことにつながります。

歯髄幹細胞の3つのポイント

歯髄幹細胞の特徴やポイントについてご紹介します。

ポイント1 歯髄の中の「歯髄幹細胞」は増殖しやすい

歯髄の中には歯髄幹細胞があり、増殖能力がとても高く、たくさんの幹細胞を得ることができます。

ポイント2 抜歯が必要な親知らず・乳歯・矯正で抜歯をする歯も対象

歯髄幹細胞の採取に使用する対象の歯は、抜歯が必要な親知らずや生え変わりの乳歯、矯正治療をするために抜歯の対象になっている歯です。
これらの不用歯は、捨てられることが多い歯ですが、アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクに保管ができます。
バンクすることで、歯髄再生治療に利用したり、すぐに治療が必要でない場合も冷凍保管して、将来の再生治療に利用したりできます。

ポイント3 保管する場合には若い時がおすすめ

歯髄幹細胞のバンクには、何歳までという年齢制限がありませんが、年齢が若い方が質が良い傾向があり、増殖しやすい特徴があります。
そのため、保管をするのであれば、若い時に保管するのがおすすめです。
そのため、不用歯がある場合には、バンクしておくと将来の歯髄再生治療に使うことができる可能性があります。

抜いた親知らずは歯髄のバンクへ

永久歯に生え変わる乳歯や抜歯が必要な親知らずは、乳歯の場合には記念に取っておく場合がありますが、大人の方はほとんどの方が捨ててしまいます。
その歯の中には、歯に栄養や酸素を運ぶ「歯髄」という組織があります。
さらにその中には、「歯髄幹細胞」が含まれており、歯髄再生治療に使うことが可能です。

今すぐに必要がない場合でも「アエラバイオ歯髄幹細胞バンク」で凍結保管しておくと、未来の再生治療に使うことができます。
すでに実用化されている自分の細胞を用いた歯髄再生治療の他にも、次のようなことへの利用が研究されています。

  • ご家族の細胞を用いた「他家歯髄再生治療」
  • 脊髄損傷
  • 顎の骨の再生
  • 美肌の維持
  • アルツハイマー病

【まとめ】

今まで抜歯した歯は、あまり活用されることがありませんでしたが、歯髄再生治療に活用できるようになりました。

歯髄を抜いてしまった歯は、栄養や酸素を供給することが難しく、もろくなってしまいます。
大切な歯の寿命が短くならないように、歯髄再生治療があります。
歯髄幹細胞を移植して、歯髄の再生を促すと栄養や酸素が供給できるようになり、歯を長持ちさせることにつながります。

すぐに治療が必要なくても、抜歯が必要な親知らずや乳歯はアエラスバイオ歯髄幹細胞バンクで冷凍保管しておくと、将来の再生治療に備えることができるので、おすすめです。