矯正治療をする際に歯を並べるスペースが足りない場合には、抜歯が検討されます。

「矯正の際に抜歯をするの?」
「抜歯矯正をして後悔しないか心配……。」
と大切な歯を抜歯することに抵抗感がある方もいるのではないでしょうか。

抜歯をせずに無理に治療をすると、噛み合わせや矯正後の歯並びに影響がでる場合があるため、歯並びの状態によっては抜歯は大切な処置になります。

そこで今回は、歯科矯正での抜歯を後悔しないためにできることについてご紹介します。

矯正治療で抜歯して後悔するケース 

矯正治療は、事前に治療方針について納得してからスタートすることが大切です。
抜歯の必要性についても事前に確認して、後悔しないようにしましょう。

・滑舌や噛む力に影響が出た

矯正治療で歯が入るスペースが足りない場合には、上下左右の4番目の歯を抜歯することが多いです。
歯には1本1本役割があるため、抜歯をすることで一時的に噛み合わせのバランスが変わったと感じる場合があります

硬い物を噛んだ時の感じが変わったり、滑舌に影響が出たと感じることもあるようです。
感じ方に個人差はありますが、治療が進んで歯並びが整ってくると徐々に落ち着いてきます。

矯正で歯を動かせる範囲は、負担がかからないように1ヶ月に0.5〜1ミリ程度と考えられています。
抜歯による違和感も治療が進むにつれて少しずつ改善していくことを知っていると、ストレスや不安を軽減できます。

・抜歯に納得できないまま治療がスタートした

どんな治療にもメリットとデメリットがあります。特にデメリットの部分も納得してから治療をスタートすることが大切です。

矯正治療は、虫歯治療と比較しても治療期間が長く、一度スタートすると継続的に治療をする必要があります。
また、多くは自由診療になるため、治療にかかる費用も高くなります。

歯並びの症状によっては、スペースを確保するために抜歯が必要になるケースもあります。

抜歯をして矯正をすると起きるデメリットを十分に確認して、その上で納得してから治療をスタートすることが重要です。

基本的に、矯正治療をスタートする前には、事前カウンセリングや治療計画の説明を受けるため、気になったことや不安なことは解決するようにしましょう。

・矯正後の仕上がりに納得ができなかった

歯並びが改善しても、その他の部分で気になることが出てくるケースがあります。
例えば骨格性の受け口の場合には、歯並びが改善することで口元の印象が大きく変わりますが、顎の輪郭は変えることができません。

事前のカウンセリングで歯科医師やカウンセラーとのコミュニケーション不足があると、まれに患者さまの目指していたゴールと異なった仕上がりになることがあります。

カウンセリングでは、きちんと治したいところや希望を伝えて、改善する見込みがあるか確認しましょう。

・顔貌(かおかたち)の変化

矯正治療で抜歯をする時には、前から笑った時に少し見える位置の4番目の歯を抜歯することが多いです。
歯が動いていくと、少しずつそのスペースが閉じて行くため、気にならなくなりますが、 一時的に気になる場合もあるでしょう。

また、上下左右で4本の抜歯をすることが多く、顔の輪郭に変化があると感じることもあります。
元々の歯並びの不正が強いと、歯並びが大幅に改善したことで、顔の印象も変わったと感じる場合もあるため、顔貌の変化は個人差があります。

抜歯矯正の時に理解しておいた方がよいこと 

抜歯矯正の前に理解しておいた方がよいことをご紹介します。

・すき間が埋まるまでに時間がかかる

矯正治療は、歯に負担がかからないように1ヶ月間で歯を動かすことができるのは、0.5〜1ミリ程度です。
全体的に少しずつ歯を動かしていきますが、すき間が埋まるまで少し時間がかかります。

ただし、前から4番目の歯を抜歯することが多いため、比較的見えにくい場所になります。

・抜歯の費用がかかる

矯正治療の費用は、歯医者ごとに内訳が異なりますが、抜歯の費用は別途発生することが多いでしょう。
矯正治療前に、費用の内訳を確認しておくと安心です。

・治療期間が長くなる場合がある

抜歯矯正が必要な場合には、大幅に歯を動かすケースが多くなります。
そのため、治療期間が長くなる可能性があります。
治療計画の説明の際に、治療期間の目安についても確認をしておきましょう。

・抜歯後に腫れや痛みを伴うことがある

抜歯をする際には局所麻酔をするため、痛みを感じることは少ないでしょう。
麻酔が切れた後は一時的に痛みや腫れを伴うこともあるため、麻酔が切れるまでに鎮痛剤を服用することをおすすめします。
また、抜歯当日は安静にして血行が良くなる「飲酒」「激しい運動」「入浴」などの行動を控えましょう。

抜歯をしないと矯正はできない?

歯が並ぶスペースが足りない場合には、矯正治療をする際に抜歯が検討されます。
しかし、条件によっては抜歯以外の方法が適用できる場合があります。

・歯列を広げる

永久歯が生え揃うまでは、顎が成長しています。
そのため、永久歯が生え揃う前のお子さんの場合には、顎のバランスを整えて永久歯が正しい位置に生えてくるように促すことができます。
顎を広げる治療をすると、歯列にスペースを確保できて、抜歯をしなくて良い可能性があります。

・IPRでスペースをつくる

矯正治療で歯を並べるスペースが足りない場合には、歯をやすりのような器具を使ってスペースを作る「IPR」という方法があります。
歯の健康に影響がない程度なので、痛みなどはありません。

歯を大幅に動かす場合には抜歯が適用になりますが、少しのスペース確保で問題なければIPRが適用できる場合があります。

抜歯した歯は再生医療に活用できる

抜歯した歯の中にある歯髄幹細胞を採取して、再生治療に活用することができます。ここからは歯髄再生治療についてご紹介していきます。

歯髄再生治療とは

虫歯が神経まで進行すると、歯の神経である歯髄(しずい)を抜く抜髄治療が必要となります。
歯髄を失ってしまうと、栄養や酸素が供給できなくなり、歯がもろくなってしまいます。

歯髄再生治療は、抜歯した健康な歯から採取・培養した「歯髄幹細胞」を、歯髄が失われた歯に移植し、歯髄を再生させる治療です。

歯髄が再生されることで、歯髄のもつ様々な機能(歯への栄養供給や、細菌への抵抗性、歯髄周囲の象牙質を修復・再生させる働きなど)が蘇り、歯の強度が高まることが期待されます。

楽しくわかる歯髄と歯髄再生治療

歯髄幹細胞の特徴

細胞を用いて身体の機能を再生させる再生医療においては、「骨髄」や「臍帯血」などから幹細胞を採取する方法もありますが、身体への負担が大きく、採取できる機会が少ないというデメリットがあります。

歯髄幹細胞の魅力の1つは、「採取の際の身体への負担が少なく、採取する機会が多い」ことです。
乳歯の生え変わりや親知らずの抜歯、矯正の際の抜歯などのタイミングで採取が可能です。

また、歯髄幹細胞は増殖能力が高く、歯の硬い組織に覆われているため、遺伝子が傷つきにくいというメリットもあります。

歯髄幹細胞については以下の記事でも詳しくご紹介しています。
歯髄幹細胞とは?歯髄幹細胞を再生医療に活用するメリット

歯髄再生治療のメリット

歯髄再生治療には様々なメリットがあります。

・歯の寿命が長くなる

歯髄を抜く際の治療で歯を削り、歯髄を失った歯は水分や栄養の供給が止まってしまうため、歯がもろくなってしまいます。
歯髄再生治療により、歯への水分・栄養供給が再開され、歯髄周囲の象牙質も再形成されることで、枯れ木のようになっていた歯の強度が高まることが期待されます。

自分の歯を残すことで、健康寿命を延ばすことも期待できます。

・感覚が分かるようになる

歯髄がない歯は、痛みなどの感覚を感じることができません。
そのため、被せ物の中で二次虫歯が広がっていたとしても、発見が遅れてしまいます。
これにより、虫歯の部分をさらに大きく削らなければいけない、虫歯が進行しすぎて抜歯をしなければいけないなど、歯の寿命を縮めてしまうことがあります。

歯髄再生治療をすることで、痛みなどの異常に気付くことができるようになれば、二次虫歯の進行を防ぐことにつながります。

歯髄再生治療のデメリット

歯髄再生治療の一番のデメリットは、治療費が高額になることです。

虫歯や歯周病などの治療は保険が適用になりますが、歯髄再生治療は自由診療のため、患者さまの全額自己負担になります。
費用は歯科医院ごとに異なりますが、治療費の一般的な費用は以下の通りです。

歯髄再生治療の費用の目安
・前歯   約50~70万円
・小臼歯  約60~90万円
・大臼歯  約80~100万円

前歯と大臼歯(奥歯)を比較すると、大臼歯の方が根管数(歯の根の数)が多く複雑な構造をしているため、治療の難易度が上がり、費用が高くなる傾向があります。

アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクとは?

アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクでは、抜歯する健全な歯(矯正で抜歯する歯や、噛み合わせに用いない親知らず、乳歯など)から採取した「歯髄幹細胞」を、半永久的に凍結保管できるため、必要なタイミングで歯髄再生治療などの再生医療に活用することができます。
医療の発展に伴い、使える範囲も広がっていく可能性もあるため、将来のご自分やご家族の治療のために、歯髄幹細胞を凍結保管しておく方も増えてきています。

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【関連記事】抜いた歯は再生医療に活用できる?歯髄幹細胞を保存するアエラスバイオ歯髄幹細胞バンクとは

【まとめ】

歯並びを整えて綺麗にするためには、歯を並べるスペースを確保する必要があるため、抜歯をすることがあります。
症状によっては、患者さまのお口の健康のために大切な処置です。

また、抜歯した健康な歯を有効活用するには「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクで細胞を凍結保管する」という選択肢があります。

すぐに歯髄再生治療が必要なくてもバンクに凍結保管しておくことで、将来治療が必要になった時に活用ができます。ご興味をお持ちの方は、ぜひご検討してみてください。