歯を失ってしまうと、日常生活において様々な悪影響が生じる場合があります。
歯は、治療により修復を行うことはできても、元通りにすることはできません。
そのため、健康な歯を保つために日頃から予防をしておくことが大切です。
今回は、歯を失った時に起きる6つのことや、歯の寿命を延ばすためにできることについてご紹介させて頂きます。

歯を失った時に起きること

歯を失ってしまうと、下記のような悪影響が生じる可能性があります。

1 ほかの歯に負担がかかる

歯には1本1本役割があるため、歯を1本でも失ってしまうと嚙み合わせのバランスが崩れてしまいます
そうすると、ほかの歯に負担がかかってしまうほか、顎への負担や噛みにくさにもつながり、食事の楽しみが減少してしまう懸念が生じます。

2 滑舌が悪くなる

歯を失ったまま放置していると、歯を失った部分から空気が抜けてしまい「サ行」や「タ行」が発音しにくくなります
そうすると、滑舌が悪くなり、コミュニケーションに悪影響を及ぼす可能性があります。

3 噛む機能の低下

食事をする時には、左右バランス良く噛むことが大切です。
しかし、歯を失ってしまうと噛みにくいため、片側だけで噛んでしまい、顎の筋肉のバランスが崩れ噛む衰えることがあります
また、この状態が長く続くと、きちんと噛んでいない状態で飲み込むことが増えてしまうため、消化機能に負担がかかるリスクもあります。

4 歯並びへの影響

歯を失ったまま放置していると、噛み合わせのバランスが崩れるだけでなく、隣合う歯が傾いてきます。
歯が傾くことで、少しずつ歯並びや噛み合わせが悪くなることがあります。

5 顎の骨が減少する

歯を失うと、歯が顎の骨に与えていた刺激がなくなることで、顎の骨が減少するリスクが高まります。
顎の骨が減ると、歯が長く見えたり、口元が老けやすくなるため、審美面に悪影響を及ぼすことにつながります。

6 健康寿命が短くなるリスクが上がる

保有する歯が19歯以下の人は、20歯以上の人と比較して、1.2倍要介護認定を受けやすいという結果が出ています(出典:南知多町「健康とくらしの調査 2013」報告書)。他にも、歯の健康と全身の健康が関係していることは、様々な研究で明らかになっており、国も国民の健康寿命をのばすために、80歳までに20本の歯を残そうと啓蒙活動を行っています。

健康な歯を保つための4つの習慣は?

お口の健康を維持するためには、生活習慣が大切です。
健康な歯を保つための習慣をご紹介します。

1 正しい歯磨き習慣

歯を失う原因の第1位は歯周病、第2位は虫歯となっています。
両者とも、磨き残しの中にひそんでいる歯周病菌や虫歯菌が原因で発症します。
そのため、口の中の細菌を減らすために、毎日のセルフケアで丁寧な歯磨きをすることが大切です。

特に、ブラッシングをする際には、歯1〜2本を目安に歯ブラシを細かく動かしましょう。
また、歯ぐきの境目に汚れが残りやすいため、歯ぐきに対して歯ブラシの角度を45°位に当てて動かしてください。

その他、汚れが残りやすい歯と歯の間には、「デンタルフロス」や「歯間ブラシ」を併用しましょう。

歯磨きは、食事をした後に行うことが望ましいです。
仕事や外出先で歯磨きが難しい場合には、口をゆすぐだけでも汚れが落ちやすくなります。

2 健康な歯を保つ食習慣

健康な歯を保つためには、歯の再石灰化を促進する働きを持つカルシウムを摂取することも重要です。
カルシウムは、牛乳やチーズなどの乳製品や海藻類に豊富に含まれているため、意識的に摂取してみましょう。

また、歯の外側のエナメル質を強くするためにビタミンAも必要です。
ビタミンAは、にんじんやかぼちゃなどの野菜や卵や乳製品にも含まれています。

加えて、ビタミンCは、歯の内部の象牙質を形成する際に大切な栄養素です。
レモンやブロッコリー、かぼちゃなどにも含まれています。
ビタミンCには傷ついたコラーゲンを修復する働きや抗炎症作用もあるため、歯周病の予防効果も期待できるでしょう。

これらの栄養素を含むバランスの良い食事を行うことが、健康な歯を保つ秘訣です。

3 セルフチェックの習慣

歯磨きをした時に口腔内のセルフチェックをする習慣をつけると、口の中の変化に気づきやすくなります。

・歯が白濁している
・歯に穴が開いている
・歯ぐきが腫れている
・歯磨きをすると出血する
・口臭が気になる
・食べ物がはさまりやすい
・歯が長くなった気がする
・冷たい物がしみる
・何もしていなくてもズキズキ痛い
・食べ物を噛むと痛い

これらの症状がある場合には、虫歯や歯周病の可能性があるため、早めに受診しましょう。

4 定期的な検診

歯周病や虫歯は自覚症状が少ないため、気づきにくい特徴があります。
定期的に検診を受けて、歯周病や虫歯がないかを確認しましょう。
その際、可能であれば虫歯予防のためのフッ素塗布やクリーニングもしてもらいましょう。

・フッ素塗布

フッ素には、「虫歯菌を抑制する働き」「再石灰化を促進する働き」「歯を強くする働き」があります。
歯磨き粉にも含まれている物がありますが、歯医者で塗布するフッ素は高濃度のため、3ヶ月に1度程度でも効果が見込めます。

・クリーニング

歯磨きしていても、歯ブラシの届きづらい部分には汚れが残ってしまいがちです。
取り切れない歯垢は、やがて歯石となり、歯ブラシでは落とし切れない状態となります。
歯科医院でのクリーニングでは、毎日のセルフケアで落とし切れない歯垢や歯石を落とすことができます。

健康な歯を保つ秘訣は歯髄(しずい)

歯髄の役割

歯髄とはいわゆる歯の神経のことです。
歯髄は、神経のほか、血管やリンパ管を含む集合組織であり、歯に栄養を供給する、細菌と戦う、周囲の象牙質を修復するなど、歯にとって重要な役割を担っています。そのため、この歯髄を健康に保つことが、健康な歯を保つことにつながります。

歯髄を抜く治療(抜髄治療)は、多くの歯科医院で日常的に行われていますが、安易に抜かず、可能な限り残すことが大切です。
万が一、歯髄を抜くことになってしまった場合は、後述の歯髄再生治療で神経を再生させるという選択肢もあります。

歯髄の役割

歯髄の役割を簡単に解説します。

歯に痛みなどの知覚を伝える

歯の神経である歯髄は、歯にトラブルが起きた時に痛みとして異常を知らせます。

歯に血液や栄養を供給する

歯髄には豊富に血管が含まれており、歯に血液や水分を供給する役割があります。

免疫細胞が侵入した細菌を死滅させる

歯髄には、リンパ管も存在します。歯髄には、血液とリンパ液により、細菌が内部に侵入するのを防ぐ働きがあります。

歯の寿命を維持するためにできる治療とは

歯にトラブルが起きたまま放置すると、加速度的に状況が悪化してしまいます。
以下に、歯の寿命を維持するためにできる治療をご紹介します。

早期の虫歯治療

虫歯菌は糖分を栄養にして、酸を発生させ、歯を溶かすことで発生します。
唾液には歯を修復する再石灰化の働きがあるため、虫歯の初期の段階では唾液や歯磨き粉に含まれるフッ素などで歯の修復を促すこともできます。

しかし、頻繁に酸にさらされる環境では、虫歯が進行して歯に穴をあけてしまいます。
ここまで進行してしまうと、虫歯菌に感染している部分の歯を削り、詰め物や被せ物を行う治療が必要となります

虫歯の早期の段階では歯を削る範囲も少なく済むため、歯の寿命を維持するためには定期的な歯科検診を受けて虫歯の早期発見と治療が重要です。

根管治療

虫歯が歯髄まで広がると、歯にズキズキとした痛みが出たり、腫れたりします
自然に治癒することは無く、強い痛みを伴い、放置すると歯の内部や顎の骨が溶けてしまいます。
根管治療は、歯の内部に侵入した細菌と共に細菌に侵された歯髄を除去し、消毒をして痛みや腫れを取り除く治療法です。
しかし、歯髄には歯に栄養や血液を供給したり、周囲の象牙質再形成を促すなど、大切な役割があるため、歯髄を除去すると歯が弱くなってしまい、歯の寿命が短くなる可能性があります。

・歯髄再生治療

歯髄を失ってしまった場合は、歯髄を再生させ、栄養や血液の供給再開や象牙質修復能力の回復を促す「歯髄再生治療」を選択することも可能です。

「歯髄再生治療」とは、失われた歯髄(歯の神経)を再生させる治療法です。
親知らずや乳歯、矯正で抜歯が必要な歯を抜いた後、その歯に含まれる「歯髄幹細胞」を専用の施設で採取・培養し、歯髄を失った歯の根管内に移植することで、歯髄を再生させます。

歯髄を取り戻すことができると、血液や栄養の供給が再開され、知覚も感じられるようになります。また、象牙質修復能力も回復し、傷ついた象牙質を再形成させる機能が働きます。

歯髄とともに象牙質も再生されるため、歯の強度が戻り、根管治療後の二次虫歯などのトラブルが起きた時も、痛みにより気づくことができ、歯の寿命を延ばすことにつながります。

楽しくわかる歯髄と歯髄再生治療

歯髄再生治療を行うには?

歯髄再生治療を行うためには、親知らずや乳歯などの抜歯をした歯から「歯髄幹細胞」を採取する必要があります。
すでに抜けてしまった歯の場合、雑菌がついていたり、歯髄が残っていなかったりするため、歯髄再生治療には適用できません。

そのため、親知らずや乳歯を抜歯するタイミングで「歯髄幹細胞」をバンクサービスで冷凍保管しておくことが重要です。
アエラスバイオと提携する歯科医院で抜歯を行うことで、専用の容器を用いて、清潔・安全な状態で歯を培養施設に送ってもらうことができます。
アエラスバイオの専門施設で採取・培養された歯髄幹細胞は、−150度以下の液体窒素タンク内で半永久的に保管されるため、再生治療が必要になったタイミングで取り出し、使用することができます。

一般的に、幹細胞は年齢が若い方が量が増えやすい傾向にあります。若い時期の細胞を保管しておくことで、未来の再生治療時に、良質な歯髄幹細胞を使用することができます。

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【まとめ】

歯を失うと、ほかの歯に負担がかかってしまったり、滑舌に影響が出る場合があります。
大切な歯を守るために、毎日のセルフケアを丁寧に行い、バランスの良い食生活を心がけましょう。
また、定期的に検診をして自覚症状が出る前に対応することも大切です。

虫歯が広がり、歯髄(歯の神経)まで進行した場合には、歯髄を除去する抜髄と根管治療が行われます。
歯髄が失われた歯の寿命は、通常の歯と比較して短くなる傾向がありますが、歯髄再生治療により、歯髄を再生できる可能性があります。
歯髄再生治療の実施には、親知らずなどの抜歯する歯から採取した歯髄幹細胞が必要となりますが、抜歯を行うタイミングで細胞を採取・培養し、凍結保管することも可能です。

大切な歯を守るために、よりよい治療を選択していきましょう。

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