永久歯を失ってしまうと、また生えてくることはありません。
近年では、大切な自分の歯でいつまでも食事ができるように、歯の再生治療も進んでいます。
歯の中には歯髄(しずい)があり、その歯髄を失ってしまった場合でも歯髄幹細胞を移植することで、失った機能を取り戻すことが期待できます。

今回の記事では、歯髄幹細胞を再生医療に活用するメリットについてご紹介します

再生医療とは?

病気だけでなく美容医療にも再生治療が広がってきています。
再生医療は、本来の細胞が持つ再生力を活かして、失われた機能や傷がついた組織を元通りに戻すことを目的にした治療です。
治療が難しかった病気やケガへの応用ができるように、研究が進められています。

その中で、再生治療で注目されているのが「幹細胞」です。
幹細胞には2つの働きがあり、「分化能力」と「自己複製能力」があります。
分化能力は、「血管」「脂肪」「骨」「心筋」など 様々な細胞に変化する働きです。
自己複製能力は、分裂して増殖する能力です。

幹細胞とは?

幹細胞とは、多様な種類の細胞に分化する能力を持つ細胞で、傷ついた細胞や失われた細胞を再び生み出し、補充する役割を果たす細胞です。

幹細胞は私たちの身体の中の「歯髄」「臍帯」「骨髄」「脂肪」などに存在しています。
以前は、骨髄から採取されることが多かったのですが、親知らずの抜歯や乳歯などの歯髄から歯髄幹細胞を採取する技術も進歩して治療ができるようになりました。
また、脂肪から幹細胞を採取する治療も行われています。

参考:幹細胞とは|一般財団法人日本再生医療協会

様々な場所から採取される幹細胞

前述の通り、幹細胞は体内の様々な場所から採取することができます。
ここでは幹細胞が採取できる組織についてもう少し詳しく見ていきましょう。

歯髄

抜歯が必要な親知らずや矯正で抜歯された歯、乳歯などの歯髄から歯髄幹細胞を採取して培養します。
歯髄は増殖力に優れており、強い再生能力を持っていると考えられています。
歯髄は、歯の中の固い組織の中にあるため、紫外線などの影響を受けにくいので、遺伝子が傷つきにくいと考えられています。

脂肪

脂肪を腹部などから、10〜20g程度採取します。
脂肪から採取される幹細胞は、骨髄と比較すると500倍と非常に多く、増殖力も高いことが分かっています。
また、臓器修復に有効な成長因子が多いことから、再生医療で多く使用されています。

骨髄

骨髄には、血液の元になる造血幹細胞の2種類が含まれています。
神経再生能力が高く、白血病、脳卒中、脊髄損傷などの治療に使用されます。
ただし、骨髄を採取する時に全身麻酔をするため、採取される方の負担があります。
また、幹細胞の含有スピードが少なく、年齢と共に増殖スピードが遅くなるという報告もあります。

臍帯

臍帯はへその緒のことで、母親から赤ちゃんに酸素や栄養を送るために大切な役割をします。
出産の時にしか採取することができない貴重な臍帯の中には、造血幹細胞があり、白血病や再生不良性貧血などの血液由来の疾患に使用されます。

幹細胞による再生医療の例

幹細胞を活用した再生医療の例について、いくつかご紹介していきます。

やけどの治療

重度のやけどを負った場合には、やけどをしていない皮膚から細胞を取り出し、培養をして皮膚を移植する治療が行われています。
ヒトの細胞をと組織を活用した医療用自家培養皮膚が製品化され、やけどや巨大母斑などに適用されています。

血液のがん

細胞治療は、iPS細胞などでも活用されるように研究が進んでいます。
造血幹細胞は、血液のガン・免疫に異常のある患者さんに正常な造血幹細胞を移植して血液の再建を図る治療法です。

iPS細胞とは

iPS細胞(Induced Pluripotent Stem Cell)とは、培養によって人工的に作られた多能性幹細胞で、日本語では「人工多能性幹細胞」とも呼ばれます。
人間の皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子を導入し、ごく少数の因子を加えて培養することで、体のほぼすべての細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力を獲得します。
このiPS細胞は、病気やケガなどで失われた機能を回復する再生治療にに活用できると考えられています。
現在では、治癒が難しいとされている疾患の方の体細胞からiPS細胞を作り、それが「神経」「肝臓」「心筋」などで分化してその患部の状態がどの様に変化するかなどを研究が進んでいます。

参考:iPS細胞とは? | よくある質問 | もっと知るiPS細胞 | 京都大学iPS細胞研究所 CiRA(サイラ)

歯髄幹細胞とは

歯の内部にある歯髄には、「神経」や「血管」が含まれています。
歯を維持するために大切な役割をする歯髄ですが、むし歯や進行して歯髄まで広がると、歯髄を除去する治療をしなけれないけません。

そうすると、歯に栄養や酸素が伝わらなくなり、歯が弱くなってしまいます。
歯を残すことはできますが、もろくなった歯は欠けたり、割れたりするリスクが高くなります。
よって、歯の寿命を縮めてしまい、最終的には歯を抜かなくてはいけなくなります。


歯髄の中には、歯髄幹細胞が含まれており、さまざまなメリットがあります。
近年ではこの歯髄幹細胞を、抜歯が必要な親知らずや乳歯などから採取し、保管することができるようになっています。歯髄を抜いた歯の中に歯髄幹細胞を移植することで、再生を促す再生治療が可能です。

歯髄幹細胞の4つのメリット

歯髄幹細胞を再生医療に活用することには様々なメリットがあります。

1 硬い歯の中にあるため、遺伝子が傷つきにくい

歯髄は、歯の内部にあるため、硬いエナメル質に守られています。
乳歯や親知らずなどの不用歯から採取する時に遺伝子が傷つきにくい特徴があります。

2 身体への負担が少ない

幹細胞を採取するためには、骨髄を採取する方法もありますが、提供する方は全身麻酔が必要で身体の負担があります。
歯髄幹細胞の場合には、抜歯が必要な歯を抜歯して、その歯の中から歯髄幹細胞を取り出すため、身体への負担が少ない方法です。

3 細胞の増殖能力が高い

幹細胞は採取して培養しますが、歯髄幹細胞は細胞の増殖能力が非常に高い細胞です。
そのため、短期間で多くの細胞を採取することができます

4 歯髄幹細胞はガンになりにくい

再生治療で注目されているiPS細胞は、多くの細胞組織に適用ができるメリットがあります。
しかし、iPS細胞にはマイナスの方向に作用した時のリスクもあります。現段階では、移植したiPS細胞がガン化する可能性はゼロではなく、慎重な研究が進められています。
それに対して、歯髄幹細胞はガン化しにくい細胞と考えられています。

幹細胞は年齢とともに減少傾向

ヒトの細胞は、20才をピークに減少傾向になります。
その中でも幹細胞は、生まれた時が一番多く、加齢とともに減少していくと考えられています。
幹細胞は体内の治癒力に関係しており、老化とともに増殖する能力も低下していきます。

先ほど歯髄幹細胞のお話をしましたが、若い細胞ほど増殖しやすく、効果が得やすいと考えられています。
そんな、若い歯髄幹細胞を保存しておくことができるアエラスバイオ歯髄幹細胞バンクがあります。

参考:年齢ごとの人の幹細胞の数について解説|国際幹細胞普及機構

アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクとは

アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクとは、抜いた歯の新しい活用方法を可能にするバンクサービスです。
お子様の場合には抜いた歯を記念に保管しておく場合がありますが、ほとんどの大人の方は抜いた歯を捨ててしまいます。

抜いた歯には内部に歯髄幹細胞があり、「再生治療」に活用できる可能性があります。
実際に、既に実用化されている歯髄再生治療に利用できる唯一のバンクが、アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクです。

自宅でそのまま保存しても使用することはできないため、歯髄幹細胞を保管するために「バンク保管」があります。

アエラバイオでは、「歯髄幹細胞バンク」「象牙質細胞バンク」「歯の組織バンク」があり、未来の自分のために、今の歯髄幹細胞を凍結保管しておき、未来の再生治療に活用できる可能性が広がります。

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【まとめ】

歯髄幹細胞は、遺伝子が傷つきにくく、採取が比較的容易で、増殖力が強く、ガン化しにくいなどの特徴があります。
そして、失った歯髄を再生する歯髄再生治療に使うことが可能です。

親知らずや乳歯などの不用歯の中から歯髄幹細胞を採取してバンク保管するという選択肢もあります。
必要になった時に、若い時の歯髄幹細胞を使うことができるため、歯髄幹細胞の質や増殖能力が高い状態で移植ができます。

年齢を重ねるごとに、歯髄幹細胞の増殖能力が低下してしまうため、親知らずなどの抜歯をする機会がバンク保管をするチャンスです。
歯髄幹細胞で歯髄再生治療をすると、歯の寿命を延ばすことにつながります。将来の健康のためにも歯髄細胞の保管を実施してみてはいかがでしょうか。